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イギリス時間の2025年11月6日、ブリティッシュ・エアウェイズを擁するIAGがStarlinkと包括契約を締結し、グループ全体の機内インターネットを無料・高速化する大方針を発表しました。対象はBA、イベリア、エアリンガス、ブエリング、LEVELの5社で、500機超のエアバス/ボーイング機に順次レトロフィット。導入開始は2026年、装着済み機では“全席・全区間・離着陸を含むゲート・トゥ・ゲート”での無料Wi-Fi提供が約束されます。IAGはこの大型投資を、BAの7億ポンド規模(約1,400億円超)の「変革プログラム」の中核施策と位置づけ、利便性とブランド力の底上げを狙います。

従来の機内ネットは地上局や静止衛星(GEO)に依存し、洋上や高緯度で速度・遅延が不安定になりがちでした。Starlinkは高度約550kmのLEO衛星を多数活用し、フェーズドアレイで衛星を追尾。これにより動画視聴やオンライン会議も“地上感覚”で使える低遅延・高帯域を提供します。IAGの発表では、特別なログインや課金を挟まない「シームレス体験」を掲げ、全キャビンでの完全無料化を明言。短中距離の欧州域内線から大西洋路線まで、乗客行動の前提を変えるアップグレードとなりそうです。

競争軸の変化も見逃せません。米国ではユナイテッド航空が2025年にStarlink導入計画を公表し、地域ジェットから展開を始めています。今回IAGが欧州大手として一気に“全社・全席無料”へ舵を切ったことで、他社も料金や品質で追随を迫られる構図です。航空各社のデジタル投資は、アプリ刷新や遅延率改善のAI活用などと合わせて「地上と空のUX一体化」がテーマになっており、IAGの動きはその象徴と言えます。

装着面では、IAG各社の機齢・退役計画に合わせたレトロフィット計画が進み、近く退役しない機体を優先してStarlink端末を搭載します。最終形では短距離の欧州域内線を含む“日常利用”のほぼ全便で、メールからストリーミングまで課金なしで利用可能に。ビジネス客の生産性はもちろん、家族旅行や出張前後の移動でも“つながるのが当たり前”になる転換点です。

また、IAGは今回の通信インフラ刷新を、空港ラウンジ増設や座席・収納の更新、アプリの全面改修といったサービス全体の再設計と連動させます。通信の“無料・高速・摩擦ゼロ”は、運賃以外の差別化ポイントとして極めてわかりやすい。短距離路線での選択理由になりやすく、LCCとの競争や大西洋路線の常連客囲い込みにも効いてきます。発表直後から英メディアも「ゲームチェンジャー」と位置づけており、2026年のロールアウトに向けて業界の注目が集まっています。