Listen

Description

日産自動車の現在の経営危機と、その打開策である新経営計画「Re:Nissan」を包括的に分析。日産は巨額の最終赤字と信用格付けの引き下げに直面しており、コスト削減、事業再編、主要市場への資源集中を柱とする「Re:Nissan」計画を策定した。特に、中国をグローバル輸出拠点として活用する戦略や、独自の電動化技術である「e-POWER」の進化に力を入れている。しかし、ホンダとの経営統合交渉の破談や株主総会での厳しい批判は、同社が自力で再建を成し遂げなければならない厳しい現実を浮き彫りにし、計画の実行リスクや地政学的リスクを指摘しつつ、日産の将来の展望について考察する。

日産自動車の新経営計画「Re:Nissan」は、同社が直面する深刻な経営危機からの脱却と、生き残りをかけた痛みを伴う「生存戦略」として策定されました。この計画は、2025年3月期決算における6,708億円の巨額の最終赤字、そして格付け機関による投資不適格(ジャンク)級への格下げ という厳しい市場評価を背景にしています。計画の最重要目標は、2026年度までに自動車事業における営業利益とフリーキャッシュフローを黒字化することに設定されています。

「Re:Nissan」計画の主要な柱と、その目標達成に向けた施策は以下の通りです。

「Re:Nissan」計画の主要な柱

  1. 5,000億円という前例のない規模のコスト削減

  2. 北米、日本、中国、欧州などの主要市場に経営資源を集中させる「選択と集中」戦略への転換

  3. 競争力を失いつつある中国市場をグローバルな輸出拠点として活用する大胆なピボット

目標達成に向けた主要な施策

聖域なきコスト削減と事業構造の抜本的改革

日産は、2024年度実績比で変動費2,500億円、固定費2,500億円、合計で5,000億円という大規模なコスト削減を断行します。

これらの施策は、販売台数の目標を追うのではなく、キャッシュ創出能力を最優先する姿勢への転換を意味し、採算の取れない資産を清算するための「計画的解体」です。

グローバル市場の「選択と集中」

日産は、限られた経営資源を利益を出せる市場に集中投下します。主要市場として米国、日本、中国、欧州、中東、メキシコの6地域が再定義されました。

中国市場の活用と技術戦略の再定義

かつて日産のドル箱であった中国市場は、現地ブランドの台頭により弱点となっていますが、これを戦略的な武器へと転換します 。

この計画は、かつてのカルロス・ゴーン元会長時代に推し進められた世界シェア拡大路線との完全な決別を意味し、会社の将来を賭けた大手術と言えます。しかし、短期的な財務諸表上の痛みを伴うだけでなく、長期的な開発能力や生産基盤を損なうリスクもはらんでいます。特に、2026年度以降の商品開発を一時的に停止するといった動きは、将来の成長に必要な筋肉を削ぎ落とす懸念も残しています。