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今回は、先日訪れた石川県金沢での特別な体験と、そこで知った胸を締め付けられるような現状についてお話ししたいと思います。

私は先日、麹や発酵食品好きにはたまらない「ヤマト醤油味噌」さんを訪れる機会がありました。そこで耳にしたのは、昨年1月に発生した能登半島地震で甚大な被害を受けた、能登地方の伝統的な魚醤「いしる(いしり)」の現状でした。

「いしる」をご存知でしょうか?イワシやイカを塩と一緒にじっくりと発酵させて作る、能登に古くから伝わる魚醤です。秋田のしょっつる、香川のいかなご醤油と並び、日本三大魚醤の一つに数えられ、能登の家庭には欠かせない調味料として親しまれています。

ヤマト醤油味噌さんは、この伝統的な「いしる」を製造・販売している会社の一つです。今回、特別に試飲させていただいた「いしる醤油だし」は、いしるにヤマト醤油味噌さん自慢の醤油とだしをブレンドした絶品で、魚醤特有のクセが抑えられ、感動するほどの美味しさでした。自宅で卵かけご飯に使ってみたのですが、ご飯が何杯でもいけてしまうほどでしたよ!能登地方では、このいしるを使った「いしる鍋」をはじめ、煮物や和え物など、様々な郷土料理が楽しまれています。

しかし、2024年1月の能登半島地震で、この大切な「いしる」の製造設備は大きな被害を受けました。製造タンクが倒壊・破損し、中身が流出したり、施設が機能不全に陥ったりと、壊滅的な状況に。ヤマト醤油味噌さんのお話では、「いしる」は現在ある在庫限りで一時販売を休止し、再生産には1年単位の長い時間が必要になるそうです。それほどまでに、手間ひまをかけて発酵と熟成を重ねる、貴重な調味料なのです。

売店で見た、残りわずかな人気商品を見て、地震の被害の大きさを肌で感じました。発酵の魅力を伝える私にとって、この伝統の味が失われるかもしれないという現実に、胸が締め付けられる思いでした。

しかし、同時に、社員の方々が「必ず復活させたい」と前向きに語ってくださる姿に、強い希望を感じました。発酵文化は、長い時間、人の手、そして自然の力によって育まれるものです。だからこそ、この「いしる」という能登の伝統を、私たちもできる形で支えていけたらと強く思います。

この放送を聴いて、「応援したい」「伝統の味を知りたい」と感じた方は、ぜひ「ヤマト醤油味噌」さんのホームページを訪れてみてください。また、今手に入るいしるを味わってみることも、支援の一つになるかもしれません。

今日の話が、発酵という素晴らしい文化を通して、誰かと繋がり、未来へと繋がるきっかけになれば嬉しいです。