Prostatitis: A Review
Citation
JAMA. 2025 Aug 11. doi: 10.1001/jama.2025.11499.
概要
前立腺炎(prostatitis)は、前立腺の感染、炎症、あるいは疼痛を含む疾患であり、生涯でおよそ9.3%の男性が経験するとされる。
急性細菌性前立腺炎は、発熱や悪寒を伴う尿路感染であり、80〜97%の症例で大腸菌やクレブシエラなどのグラム陰性桿菌が原因となる。本症では、ピペラシリン-タゾバクタムやセフトリアキソンの静注療法、あるいは経口シプロフロキサシンなどを2〜4週間投与する治療が成功率92〜97%と高い。
慢性細菌性前立腺炎では、再発性の尿路感染が持続し、同一菌による反復感染が特徴である。74%の症例にグラム陰性菌が関与し、レボフロキサシンやシプロフロキサシンを最低4週間投与する治療が第一選択とされる。
**慢性前立腺炎/慢性骨盤疼痛症候群(CP/CPPS)**は、3か月以上続く骨盤領域の疼痛や排尿症状を特徴とし、診断には他の疾患(感染、がん、尿閉塞など)を除外する必要がある。症状評価には NIH Chronic Prostatitis Symptom Index(NIH-CPSI、0〜43点)が用いられ、6点の変化で臨床的意義があるとされる。治療として、α遮断薬(たとえばタムスロシンやアルフゾシン)が第一選択であり、NIH-CPSIで-4.8〜-10.8点の改善が認められる。その他、NSAIDs(例:イブプロフェン)、プレガバリン、及び花粉エキスも症状改善に対しわずかな効果が示されている(それぞれNIH-CPSIで-1.7〜-2.5点程度のスコア改善)。
以上から、本Reviewは前立腺炎を『急性細菌性』『慢性細菌性』『CP/CPPS』の3カテゴリーに分類し、各々に対する診断および治療法を明確に区分して整理している。その結果、抗菌薬の種類・投与期間、疼痛対策の選択に関する臨床指針として有用な知見を提供している。