Peanut butter confirmed as the source in a case of infant botulism, United Kingdom, 2024
Citation
Eurosurveillance, 30(30):2500512 (2025)
論文の要約
本報告は、英国で発生した乳児ボツリヌス症の確定症例について、食品由来の感染源が市販のピーナッツバターであったことをゲノム解析により証明したものである。ピーナッツアレルギー予防のため、生後6か月の健康乳児にピーナッツバターを摂取させたことが感染契機となった。
臨床経過:発症初期は便秘・嗄声・哺乳力低下・筋緊張低下などの非特異的症状で始まり、進行性に呼吸不全をきたして人工呼吸管理を要した。ヒト由来抗毒素(BIG-IV)を米国から取り寄せて投与し、回復に至った。
原因同定:乳児の便とピーナッツバターからClostridium botulinum type Aを分離。全ゲノム解析により両株が完全一致し、ピーナッツバターが感染源であると結論された。
背景と議論:
ピーナッツの農場・加工過程でC. botulinum芽胞に汚染される可能性があり、芽胞は加熱にも強い。
本症例は発症まで時間を要しており、食品中にあらかじめ毒素が存在した「食中毒型」ではなく、腸内での芽胞発芽と毒素産生による「乳児ボツリヌス症型」であると推定される。
ピーナッツ導入の早期介入がアレルギー予防に有効であるとの知見は確立されているが、その一方で芽胞汚染食品のリスクにも留意すべきである。
臨床的・公衆衛生的意義:
本症例は、市販の加工食品が乳児ボツリヌス症の原因となることを示した極めて稀だが重大な事例であり、離乳食指導において芽胞汚染のリスクに対する啓発と注意喚起の必要性が強調される。