Clinical course and management of COVID‑19 in the era of widespread population immunity
Citation
Nature Reviews Microbiology, vol. 22, pp. 75–88 (2024)
論文の要約
本レビューは、ワクチン接種と自然感染による集団免疫が広がった現在、COVID‑19の臨床経過と治療管理がどのように変化しているかを整理している。
重症化リスクの減少:ワクチンや過去感染による免疫獲得により、重症化・入院リスクが大幅に減少。ただし、免疫抑制者や妊婦、基礎疾患を抱える者は依然として注意が必要である。
症状の多様化:従来株と比べ、オミクロン系統では上気道症状(咽頭痛、鼻漏など)が中心で、嗅覚・味覚障害の頻度が相対的に低下。
治療戦略の進化:抗ウイルス薬(レムデシビル、モルヌピラビル、ニルマトレルビルなど)と免疫調節薬(デキサメタゾン、IL‑6阻害薬、JAK阻害薬など)に基づく証拠が蓄積し、患者の免疫状態・重症度に応じた治療プロトコルが定着しつつある。
特定集団への対応:免疫不全者、妊婦、ワクチン非接種者・接種者それぞれに対し、適切な治療薬・タイミングを選択する必要性が強調されている。
知見の限界と今後の課題:大半の臨床試験は免疫未獲得者を対象としており、現行のワクチン接種後の集団への適応にはデータギャップがある。今後はリアルワールドデータやブースター接種状況下での治療エビデンスが求められる。
本レビューは、COVID‑19のパンデミック初期から現在の集団免疫社会への移行を踏まえ、臨床現場での診断・治療指針のアップデートを支援する重要なガイドライン的論文といえる。