State-of-the-Art Review: Persistent Enterococcal Bacteremia
Citation
Clinical Infectious Diseases, 2024; 78(1): e1–e11
論文の要約
本レビューは、Enterococcus属(特にE. faecalis, E. faecium)による菌血症が、抗菌薬治療にもかかわらず持続する「遷延性菌血症」の現象について、定義の曖昧さ、診断的アプローチ、治療戦略の限界、今後の課題を包括的に整理している。
定義と頻度:明確な定義はなく、多くの研究では「適切な抗菌薬治療後72時間または4日以上の血液培養陽性」としている。報告によって頻度は異なるが、VRE菌血症では8〜22%が該当する。
リスク因子:好中球減少、血液悪性腫瘍、感染源コントロールの遅れなどが関連し、30日死亡率は非遷延群より高い(例:32% vs 18%)。
診断アプローチ(図あり・p.2):
感染源探索にはTTE/TEE、PET/CT、内視鏡検査などを活用。
感染性心内膜炎の評価にはNOVA、DENOVAスコアやDuke-ISCVID基準を用いる。
治療選択肢:
抗菌薬としてはアンピシリン、バンコマイシン、ダプトマイシン、リネゾリドなどがあるが、耐性菌(特にVRE)の治療は限られる。
ペニシリン+セフトリアキソン併用はE. faecalis感染性心内膜炎に有効とされ、アミノグリコシド併用と同等の治療効果が期待される。
デバイス関連感染やバイオフィルム形成が遷延化の一因であり、外科的介入も重要。
今後の課題:
遺伝学的・免疫学的研究によるリスク層別化の精緻化
抗菌薬併用療法の最適化に向けたRCTの不足
新規薬剤(オリタバンシン、セフタロリンなど)の臨床的位置づけの検討
本稿は、Enterococcus菌血症の持続例において臨床医が直面する不確実性とその対処法を丁寧に整理し、今後の研究と診療指針の構築に貢献する内容である。