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Opsoclonus-myoclonus-ataxia syndrome in an ART-naïve patient with CSF/plasma HIV-1 RNA discordance

Citation
Open Forum Infect Dis. 2025; doi:10.1093/ofid/ofaf517

概要
本論文は、抗レトロウイルス療法(ART)未導入のHIV感染患者において、髄液と血漿のHIV-1 RNA量に不一致(CSF/plasma HIV-1 RNA discordance)を伴うオプソクローヌス・ミオクローヌス・失調症候群(OMAS)の症例を報告したものである。

症例は16歳の女性で、歩行障害、ミオクローヌス、オプソクローヌスを呈し、慢性HIV感染と診断された。血漿のHIV-1 RNA量(8.1×10⁴ copies/mL)に比べ、髄液ではより高値(1.5×10⁵ copies/mL)を示し、CSF/plasma HIV RNA比が1を超える不一致が確認された。髄液では単核球優位の細胞増多と蛋白上昇を伴い、他のウイルスや自己免疫抗体は陰性であった。脳MRIでは大脳深部白質から脳幹にかけて淡い異常信号を認めたが、腫瘍性病変は確認されなかった。

治療としてエムトリシタビン/テノホビルアラフェナミドとドルテグラビルを導入したところ、髄液および血漿のHIV-1 RNA量は速やかに低下し、症状も急速に改善した。補助的な免疫抑制療法は行わず、ART単独で神経症状の改善が得られた点が特筆される。

本症例は、ART未導入のHIV患者においてもCSF/plasma HIV RNA discordanceがOMAS発症に関与し得ることを示し、こうした場合にはARTのみで臨床的寛解が期待できることを示唆している。今後、HIV関連神経症候群の診断や治療戦略において、髄液・血漿間のウイルス量の比較が重要となる可能性がある。