IDSA 2020 Guideline on the Diagnosis and Management of Babesiosis
Citation
Clinical Infectious Diseases, 2020; 72(2): e49–e64
概要
本ガイドラインは、マダニ媒介寄生原虫感染症であるバベシア症に対する最新の診断・治療方針を示している。米国北東部・中西部を中心に発生し、重症例は免疫不全者や脾摘患者、高齢者で多い。
診断
第一選択:ギムザ染色末梢血塗抹標本での原虫確認。
PCRは感度・特異度が高く、特に低寄生率例や塗抹陰性例で有用。
血清抗体検査は補助的で、急性期診断には単独使用を推奨しない。
感染既往があるドナーからの輸血後バベシア症(TTB)に注意。
治療
軽症〜中等症:アトバコン+アジスロマイシンを7〜10日間(第一選択)。
中等症〜重症:クリンダマイシン+キニーネ(副作用に注意)。
重症例や寄生率10%以上、溶血性貧血・臓器不全例では交換輸血を考慮。
免疫不全者では再発リスクが高く、4〜6週間以上の長期治療を推奨。
特殊集団
妊婦ではアトバコン+アジスロマイシンの安全性データが限られるため、重症例はクリンダマイシン+キニーネを推奨。
予防
マダニ曝露予防(忌避剤、衣服、早期除去)が基本。輸血スクリーニングも重要。
結論
バベシア症は早期診断と適切な抗原虫薬療法により予後が改善するが、免疫不全者や重症例では再発や死亡のリスクがある。地域流行状況の把握とマダニ予防が重要である。