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元の論文:Management of Staphylococcus aureus Bacteremia: A Review
Citation:JAMA. 2025;334(9):798–808. doi:10.1001/jama.2025.4288

論文の要約
この総説は、黄色ブドウ球菌による菌血症(Staphylococcus aureus bacteremia, SAB)について、診断から治療まで最新のエビデンスをまとめています。

◯ 世界的に重要な感染症です
S. aureus 菌血症は世界で年間30万人の死亡を引き起こし、致死率は15〜30%とされています。特に心臓弁や人工関節、透析カテーテルなどに関連した感染が増えています。

◯ 症状と診断の流れ
患者の多くは発熱で発症し、関節痛や背部痛など転移性感染による症状を伴うこともあります。診断は血液培養で行い、持続する菌血症は死亡リスクを大きく高めます。全例で心エコー検査を行い、心内膜炎や転移性病巣を探すことが推奨されています。

◯ 治療の基本
・経験的治療はMRSAに効く薬(バンコマイシンまたはダプトマイシン)を開始し、感受性結果が出たらMSSAにはセファゾリンや抗ブドウ球菌ペニシリンに切り替えます。
・感染源コントロール(カテーテル除去、膿瘍ドレナージ、デブリードマン)が極めて重要です。
・単剤治療が基本で、併用療法は大規模試験で有効性が示されていません。

◯ 治療期間と経口移行
リスクが低い単純な例では2週間、高リスクや合併症例では4〜6週間以上の点滴治療が必要です。最近の臨床試験では、条件を満たせば一部の患者で点滴から内服への早期切り替えも安全である可能性が示されています。

◯ 予後と今後の課題
90日死亡率は約27%、5年で61%に達します。感染症専門医の関与は死亡率低下に関連しており、特に直接診察が重要です。今後は経口治療の適応拡大や新規抗菌薬(セフトビプロールなど)の評価が進むと期待されています。

#黄色ブドウ球菌 #菌血症 #抗菌薬治療 #感染源コントロール #感染症専門医