The Common Cold Is Associated With Protection From SARS-CoV-2 Infections
Citation
Journal of Infectious Diseases, jiaf374
概要
米国12都市で実施されたHEROSコホート(家庭内でのSARS-CoV-2感染前向き観察研究)の解析から、直近のヒトライノウイルス(HRV)感染がSARS-CoV-2感染リスクおよびウイルス量低下と関連することが示された。
研究デザインと対象
1,156人から収集した10,493本の経時的鼻腔スワブを用い、21種類の呼吸器病原体をPCR検査。さらに感染前スワブやHRV感染スワブに対してRNAシーケンスを実施。
主な結果
過去30日以内にHRV感染があった場合、SARS-CoV-2感染リスクは48%低下(aHR 0.52, P=0.034)。
SARS-CoV-2感染者において、直近のHRV感染はウイルス量を約10倍低下させた(P=0.0031)。
感染前の鼻腔遺伝子発現解析で、SARS-CoV-2ウイルス量と逆相関する57遺伝子を同定。そのうち24遺伝子は抗ウイルス防御に関与し、22遺伝子はHRV感染により有意に発現上昇。
小児ではこの抗ウイルス遺伝子プロファイルの発現が成人より高く(平均1.11倍, P=0.014)、HRV感染リスクも成人の2.2倍。
メカニズムの示唆
HRV感染は気道上皮細胞でインターフェロン関連抗ウイルス遺伝子群を誘導し、その持続的な発現がSARS-CoV-2感染防御に寄与している可能性がある。小児はHRV感染頻度が高く、これが防御遺伝子の高発現状態を維持し、症状の軽減や感染抑制につながっていると考えられる。
結論
ライノウイルスによる「かぜ」が、免疫遺伝子の誘導を介してSARS-CoV-2感染を減少させる可能性があることが、前向きヒトコホートと分子解析により示された。これらの知見は将来のウイルス流行予測や新規治療標的の開発に役立つ可能性がある。