A feasibility study for personalized phage therapy against drug-resistant bacteria in Japan
Citation
Journal of Infection and Chemotherapy, 31 (2025): 102770
論文の要約
本研究は、日本国内でパーソナライズドファージ療法(個別化ファージ療法)の導入可能性を評価することを目的とした観察研究であり、2023年8月から2024年9月にかけて多剤耐性菌感染症の患者を対象に実施された。
対象患者:30例(うちMRSA 10例、CRPA 5例、NTM 6例を含む)。感染部位は呼吸器感染が最多(43.3%)、次いで骨・関節感染および皮膚・軟部組織感染(各20%)。
ファージの準備成功率:30株中26株(86.7%)に対して、有効なファージ(10⁸ PFU/mL以上)が環境またはファージライブラリーから準備可能であった。CRPAに対しては環境由来からの分離が容易で、MRSAやNTMに対しては既存ライブラリーが有効だった。
死亡率と背景:全体の30日死亡率は20%、観察期間中の死亡率は36.7%であり、特にCRPAやS. maltophilia、ESBL産生菌における死亡率が高かった。NTMでは死亡例は見られなかった。
ファージ精製と品質評価:代表的なCRPA株に対するファージ(PSM11-4m4)は、精製後のエンドトキシン含有量が臨床使用可能な基準を満たし、臨床応用に向けた品質要件も確認された。
今後の課題:非GMP下での迅速なファージ製造、エンドトキシン除去の最適化、ファージライブラリーの拡充、感染症専門医を中心とした多職種による適応判断体制の構築が求められる。
本研究は、日本でのパーソナライズドファージ療法の臨床導入に向けた初の実証的検討であり、将来的な臨床試験設計と制度構築に貴重な基礎データを提供している。