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Algal blooms in the ocean: hot spots for chemically mediated microbial interactions

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Nature Reviews Microbiology, vol. 22, pp. 138–154 (2024)

論文の要約
本レビューは、海洋における藻類ブルームが、微生物間の化学的コミュニケーションが活発に行われる「相互作用のホットスポット」であることに注目し、その分子メカニズムと生態学的意義を整理している。

藻類ブルームでは、藻類、細菌、ウイルスなどが高密度に共存し、さまざまな低分子化合物(infochemicals)を介して相互に影響を与え合っている。これらの化学物質は、共生・競合・捕食・防御といった関係性を調節し、ブルームの発生・維持・崩壊に直接関与する。

特に、分泌される代謝産物や信号分子が、相手の行動(例えば代謝活性や細胞死)を引き起こす「化学的対話」の例が紹介されており、これらがブルームの時間的推移や物質循環への影響を与えていることが示唆されている。

また、単一細胞解析技術や環境メタボロミクスの進展により、これまで難しかったin situでの化学相互作用の可視化・定量が可能になりつつあり、微視的プロセスと地球規模の炭素循環・気候調整機構とを結びつける研究が加速している。

本レビューは、海洋微生物生態系の理解を化学的相互作用の視点から再構築し、地球環境変動との関連性を考えるうえで重要な枠組みを提供している。