Sepsis and Septic Shock
Citation
N Engl J Med. 2024 Dec 5;391(22):2133–2146. doi:10.1056/NEJMra2403213
概要
本総説は、敗血症および敗血症性ショックの最新知見を包括的にまとめたものである。
世界で年間約4,890万例の敗血症と1,100万例の関連死が推定されている。
全症例の約85%は低・中所得国で発生し、特にサハラ以南アフリカでの負担が大きい。
米国では入院死亡の3分の1以上が敗血症に関連し、医療費は年間380億ドルを超える。
主な感染巣は肺(40〜60%)、腹部(15〜30%)、尿路(15〜30%)、血流、皮膚軟部組織。
敗血症は感染に対する宿主応答の破綻による急性臓器障害として定義される。
免疫異常:過剰炎症と免疫抑制が同時進行。好中球や単球の機能低下、リンパ球減少とT細胞疲弊が特徴。
血管障害:血管内皮の透過性亢進、補体系の過剰活性化、凝固異常。
図2(p.5) では、好中球・マクロファージによる炎症、リンパ球死や免疫抑制、微小血管障害が連動し多臓器不全に至る過程が模式的に示されている。
発熱、倦怠感、呼吸困難など非特異的症状に加え、急性臓器不全(意識障害、乏尿、低血圧)が手がかりとなる。
検査所見では白血球異常、乳酸上昇、腎機能障害などが特徴。
診断の鍵は感染症状と急性臓器障害の同時確認である。
感染制御:迅速な広域抗菌薬投与と感染源コントロール(デバイス抜去、膿瘍ドレナージなど)。
輸液と循環管理:初期蘇生では30 ml/kgの晶質液投与が推奨される。過剰輸液も予後不良と関連するため、動的指標を用いた個別化が重要。
昇圧薬:ノルアドレナリンが第一選択。MAP 65 mmHgを目標。
副腎皮質ステロイド:持続性ショック例ではヒドロコルチゾン(200 mg/日±フルドロコルチゾン)を考慮。
表2(p.8–9) では、2015年以降の主要臨床試験(ARISE, ProCESS, ADRENAL, ANDROMEDA-SHOCK など)の結果が整理され、EGDTの有効性の否定、輸液種類の検討、昇圧薬目標、個別化戦略などのエビデンスが示されている。
敗血症生存者の多くに認知機能障害、ADL低下、新規慢性疾患の発症がみられる。
小児敗血症後も約35%が1年後に健康関連QOLを回復できないと報告されている。
長期的には炎症・免疫抑制マーカーが持続し、再感染や死亡リスク上昇に寄与する。
サブタイプごとの治療効果差異を考慮した精密医療の確立。
診断バイオマーカーやトランスクリプトーム解析の臨床応用。
低・中所得国における臨床試験と医療インフラ整備。
結論
敗血症は世界的な主要死因であり、感染制御と循環管理が治療の基盤である。今後は免疫・血管異常を標的とした新規治療の開発と、患者サブタイプに応じた個別化治療が必要である 。
疫学病態生理臨床像と診断治療予後と長期影響今後の課題