Fever and Fever of Unknown Origin: Review, Recent Advances, and Lingering Dogma
Citation
Open Forum Infectious Diseases, 2020; 7(5): ofaa132
概要
本総説は、発熱と原因不明熱(FUO)に関する歴史的背景、診断定義の変遷、生理学的メカニズム、現代の診断手法と管理方針を包括的に整理している。
歴史と定義の変遷
37.0°C(98.6°F)という平均体温の基準は19世紀のWunderlichの研究に由来するが、現代のデータでは平均36.8°C程度であり、正常範囲の再評価が必要とされる。FUOは1961年のPetersdorfとBeesonの定義(38.3°C以上、3週間以上持続、1週間以上の入院精査で診断不能)に始まり、1991年にDurackとStreetが「古典的FUO」「院内発症」「好中球減少性」「HIV関連」の4分類に改訂した。
病態生理
感染症に伴う発熱は、細菌由来LPSなどの外因性発熱物質がマクロファージや樹状細胞を介してIL-1、IL-6、TNFなどの内因性発熱性サイトカインを誘導し、脳の視索前野でPGE₂産生を介して体温セットポイントを上昇させる機序で説明される。
原因疾患の分布
古典的FUOの原因は感染症(16〜55%)、炎症性疾患(10〜34%)、悪性腫瘍(7〜31%)、その他、診断不能例が一定割合を占める。感染症では結核、心内膜炎、膿瘍、複雑性尿路感染症が頻出する。
特殊集団
旅行後発熱ではマラリア、デング熱、腸チフス、急性HIVが代表的。院内発症では薬剤熱、術後合併症、カテーテル関連感染が多い。免疫不全患者やHIV感染者では日和見感染や悪性腫瘍が原因になりやすい。
診断アプローチ
詳細な病歴と身体所見による診断手がかり(PDC)を重視。画像検査ではCTやMRIに加え、18F-FDG PET/CTが有用で診断感度85%以上との報告もある。検査は段階的に行い、非侵襲的評価で原因不明の場合に侵襲的検査(生検など)を検討する。
管理と予後
安定した非免疫抑制患者では経験的抗菌薬は極力避け、診断確定後に治療を開始する。好中球減少や重症例では広域抗菌薬を速やかに導入。診断未確定でも多くは予後良好で、特に18F-FDG PET/CT陰性例では自然寛解も多い。
結論
FUOは依然として診断困難な臨床的課題であり、古典的疾患に加え新たな原因も増えている。系統的かつ柔軟な診断アプローチと、症例ごとの臨床判断が不可欠である。