Shigella sonnei: epidemiology, evolution, pathogenesis, resistance and host interactions
Citation
Nature Reviews Microbiology (2025年5月号)
論文の要約
本レビューは、グローバルに増加傾向にあるシゲラ・ソンネイ感染症を中心に、疫学・ゲノム進化・病原性・抗菌薬耐性・宿主応答について最新知見を総合的に整理したものである。
疫学と進化:低所得国で多かった従来のシゲラ・ソンネイに比べ、多様な地域で流行が拡大しており、都市化や国際的移動の影響が指摘されている。また、S. flexneri研究で得られた知見がS. sonneiにも有用であることが示された。
ゲノム監視による洞察:全ゲノム解析やゲノム監視手法の普及により、耐性遺伝子の獲得傾向、クローンの伝播経路、地域間の感染連鎖などが明らかになった。
病原性メカニズムと宿主応答:T3SSや毒素、O抗原などの病原因子が解析され、これらがどのように宿主細胞への侵入や免疫応答を制御するかが詳述されている。
抗菌薬耐性:シゲラ・ソンネイは既存の抗菌薬に対して多剤耐性を獲得しており、その背景にあるプラスミドや耐性遺伝子クラスターなどのメカニズムが解説されている。
ワクチン開発に向けた示唆:遺伝型ごとの違いや病原因子の構造を踏まえた抗原設計が進んでおり、次世代ワクチン候補に関する展望が示されている。
本論文は、S. sonnei感染症の現状を最新技術の視点で整理し、公衆衛生・臨床対応・ワクチン戦略を多面的に評価するものであり、感染症研究者のみならず、政策決定者にとっても重要な内容である。