State-of-the-Art Review: Data and Trust to Improve Care for Transgender and Gender-Diverse Patients
Citation
Clinical Infectious Diseases, 2025; 80(2): e16–e30
論文の要約
本レビューは、トランスジェンダーおよびジェンダー多様性(TGD)を有する患者に対する医療の現状を踏まえ、臨床現場における「信頼」と「データ」に基づいたケアの在り方を解説している。性的マイノリティを巡る法的制約が強まる中、性別違和を抱える人々に対して包括的な医療を提供するために、診療環境の整備、教育、制度改革の重要性が強調されている。
クリニック環境と尊厳の尊重:選択名と代名詞の使用、 intake フォームの見直し、医療記録の修正などがTGD患者の信頼構築に重要である。
性別肯定ホルモン療法(GAHT)と手術(GAS):
GAHTにはリスクと利益を説明した上での同意取得が必須であり、精神的健康状態の有無は適応の障害とはならない(SOC8に準拠)。
GAS(胸部・顔面・外陰部を含む)は、適切な術者による手術では合併症率が低く、性別違和の軽減と満足度の向上が報告されている。
非医療グレードのフィラー注射の合併症:一部の患者が美容目的で受けるシリコン注射などにより、慢性的炎症や感染、肉芽腫、瘻孔形成などが生じうる。多くは対症療法に留まる。
性感染症と性の健康:TGD女性(TGW)はHIVおよびSTIの罹患率が高く、自己採取スワブやHPVスクリーニングの導入などが有効。Doxy-PEP(性行為後ドキシサイクリン予防)など新たな介入も議論されている。
HIV予防・治療におけるGAHTとの併用:
TGD患者ではPrEP・ARTの利用率が低く、GAHTとの薬物相互作用への懸念が治療継続の障壁となっている。
カボテグラビルやリルピビリンの長期作用型注射製剤(LA-CAB/RPV)は、服薬継続が困難な層への新たな選択肢となり得る。
今後の展望:法的・経済的障壁を乗り越え、TGD患者が安心して医療を受けられる環境整備が急務であると強調されている。
主なポイント