Using Wolbachia to Eliminate Dengue: Will the Virus Fight Back?
Citation
J Virol, 95(13):e02203‑20 (2021)
論文の要約
本レビュー論文は、デング熱媒介蚊 Aedes aegypti に Wolbachia を導入する手法の成果とともに、ウイルス側がどのように適応しうるかというリスク評価を包括的に行っている。
現場試験の成果:Wolbachia を感染させた蚊集団は、デングウイルスの伝播能力を著しく抑制し、実地導入の初期段階で感染率低下が報告された。
適応の可能性:ただし、RNA ウイルスであるデングウイルスは高い変異獲得能を有しており、宿主—媒介者—ヒトの生活環を通じて適応を起こす可能性が存在する。
選択圧と進化的制約:レビューでは、蚊体内での繁殖阻害フェーズやコストを伴う変異の出現頻度、固有の生態系との適応トレードオフなどが詳細に解析されている。
監視の必要性:著者らは、Wolbachia 導入プログラムにおいては、ウイルス変異のモニタリング、媒介者間および地域間での伝播追跡を必須とすべきであると強調している。
本論文は、Wolbachia を用いた環境操作型デング制御の有効性のみならず、ウイルス側がいかにして反撃する可能性があるかを科学的に整理した重要なレビューであり、公衆衛生戦略としての採用を検討する上で不可欠な視座を提供している。