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いすゞ自動車(7202):社会の「運ぶ」を支えるグローバル企業社会の基盤である「運ぶ」を支えることを使命とするいすゞ自動車。その歴史は、2000年代初頭に営業損失を計上し、人員削減や配当停止を伴う厳しい経営改革を断行した過去にも象徴されるように、絶え間ない変革と再生の物語である。この経験こそが、今日の同社を形作る強靭さの礎となっている。

同社の事業は商用車(CV)と小型商用車(LCV)を中核とし、その屋台骨を支えるのが、大型トラックの象徴「ギガ」、都市内物流の主役である小型トラック「エルフ」といった象徴的な製品群だ。さらに、世界約120ヶ国で成功を収めるピックアップトラック「D-MAX」は、150ヶ国以上に広がるグローバルな事業展開における戦略的足掛かりとなっている。各国の市場環境や用途に合わせた製品群で、現地の経済活動を支えているのだ。

この伝統的な製造業の強みを基盤としながらも、いすゞは未来の成長が単なる車両販売の先にあることを見据えている。新たに策定した中期経営計画「ISUZU Transformation – Growth to 2030 (IX)」の下、顧客の課題を解決する「商用モビリティソリューションカンパニー」への変革を加速。これは、車両を販売する一度きりのビジネスから、そのライフサイクル全体を通じてサービスを提供する継続的な収益モデルへの転換を意味する。その象徴が、国内初のBEVフルフラット路線バス「エルガEV」や、燃費や位置情報を遠隔で収集・解析するクラウド型運行管理システム「MIMAMORI」といった取り組みであり、同社が未来の物流インフラをどう描いているかを具体的に示すものだ。

2000年代初頭の深刻な経営不振を乗り越えた経験を持ついすゞだが、現在も「為替変動」や「大口顧客への依存」といった事業リスクは常に存在する。しかし、その視線は未来へと向けられている。中核である製造事業を強化しつつ、新たなサービス事業を開拓する現在の戦略は、今日の市場変動を乗り切るために練り上げられた、まさに百戦錬磨の経営姿勢の表れと言えるだろう。