元ネタ https://jazzywada.blog.jp/archives/1085548847.html
2001年11月25日発行の「ふりーはーとメールマガジン」第22号を中心に構成されており、真空管を主題に論じています。筆者は、柴田翔の短編「ロクタル管の話」をきっかけに話題を展開し、家電小売店の名称の変遷や、真空管アンプの型番に言及しています。特に、1976年のミグ25亡命事件の際、ソ連の技術力が揶揄された件について、真空管は高周波出力増幅に合理的に使用されていたという技術的な考察を提示しています。また、筆者は自作した古い真空管アンプを現在も愛用しており、未組立のキットや未使用の部品が手元にあるという趣味的な側面も紹介されています。
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「旧式」と笑われたソ連の戦闘機。真空管が教えてくれる「本当の技術力」についての3つの逆説
私たちの周りは、日々進化する最新のデジタル技術で溢れています。スマートフォン、AI、クラウドサービス──。そんな時代に、「真空管」と聞くと、どこか懐かしく、時代遅れのアナログ技術というイメージを抱くかもしれません。
しかし、その「古さ」の中にこそ、現代が見失いがちな本質的な価値が隠されています。この記事は、2001年11月に配信された個人のメールマガジン「ふりーはーとメールマガジン」第22号を基に、真空管という技術が教えてくれる3つの意外な発見と教訓を解き明かしていきます。
1. 旧式と笑われた戦闘機、その裏にあった合理的な選択
1976年、ソ連の最新鋭ジェット戦闘機ミグ25が、亡命を望むパイロットによって函館空港に強行着陸するという衝撃的な事件が起きました。当時、西側諸国は謎に包まれていたソ連の軍事技術に大きな関心を寄せました。
機体を調査した結果、電子機器の一部に「真空管」が使われていることが判明します。これを知った西側の専門家たちは、「ソ連の技術は旧式で遅れている」と揶揄しました。
しかし、メールマガジンの筆者は、それは技術的な遅れではなく、むしろ合理的な選択だったと指摘しています。特に、強力なレーダーなどに必要な高周波の出力増幅において、当時のトランジスタやICでは実現が難しい高い出力や耐久性を確保するためには、6JS6や6146Bといった真空管が実用的で当然の選択肢だったのです。
このエピソードは、私たちに重要な教訓を与えてくれます。それは、必ずしも「最新=最良」ではないということ。目的を達成するために最も適した技術を選択することこそが、真の技術力と言えるのかもしれません。
2. 20年以上も現役。デジタル時代にはない驚異的なタフさ
デジタル製品が数年で陳腐化し、故障すれば修理もままならない現代において、「寿命」という概念は大きく変化しました。しかし、真空管の世界はまったく異なります。
筆者は2001年の時点で、自身が製作した2台の真空管アンプが、22年前(1979年製)と19年前(1982年製、2A3シングルステレオアンプ)のものであるにもかかわらず、どちらも全く問題なく「現役」で稼働していると語っています。彼がその年数をはっきりと記憶しているのは、「我が子が生まれる年に作成した」という、人生の節目と深く結びついているからです。
この事実は、真空管が単なる過去の遺物ではなく、通常の使い方をすれば非常に丈夫で長寿命な電子素子であることを証明しています。半導体の登場によって主役の座を譲りましたが、その驚異的なタフさと信頼性は、現代の製品にはない大きな魅力です。
3. 「いつか作ろう」は無駄じゃない。生き続ける趣味と技術
筆者の手元には、5年前に購入したまま組み立てていないアンプのキットや、使い道の決まっていないスピーカーユニット、そして真空管のストックがあるといいます。一見すると、それは単なる「使われない物」かもしれません。
しかし、それは単なる放置ではありません。彼の趣味の流儀は、キットの部品を好みのものに交換し、塗装を替えて自分だけの作品に仕上げること。そのための部品はとっくに準備が整っているのに、なかなか作業に取りかかれないでいる、というのです。
筆者はこの状況を「読むあてもない文学全集が、積んであるのと似ている」と表現します。それは、単なる物としてではなく、いつか形にするという情熱や楽しみを内包した、趣味の対象としての価値を持っているのです。
そして、その情熱を支えるように、真空管技術は今も生き続けています。半導体が主流となった後も、オーディオファンなどに需要のある型番の真空管は世界中で製造が続けられているのです。もちろん、これは型番によりけりで、需要のないものは在庫を探すしかありませんが、供給が完全に途絶える心配は当面ない、と筆者は記しています。
これは、真空管が単に過去の技術として博物館に飾られているのではなく、今もなお愛好家の手によって支えられ、進化を続ける「生きた文化」であることを示しています。
今回取り上げた20年以上前のメールマガジンは、真空管を通して私たちに3つの重要な視点を教えてくれました。
技術は常に新しいものが優れているとは限りません。一つの技術と長く付き合うことで見えてくる価値や哲学があります。
最後に、少しだけ考えてみてください。あなたの周りにある「古い」ものは、本当にその価値を終えているのでしょうか?
本文:真空管から学ぶ3つの意外な真実結論