Optimal Head-of-Bed Positioning Before Thrombectomy in Large Vessel Occlusion Stroke: A Randomized Clinical Trial
JAMA Neurol. 2025;82(9):905-914
本研究(ZODIAC試験)は、大血管閉塞(LVO)による急性期脳梗塞患者において、血管内血栓回収療法(MT)を開始するまでの待機時間における最適な頭位(0度 vs 30度)を検証したランダム化比較試験である。MTの適応があり、画像診断で虚血ペナンブラの生存が確認された患者92名を対象とした。
主要評価項目であるMT実施前の神経学的悪化(NIHSSスコアの2点以上の増加)を比較した結果、30度群では0度群と比較して悪化のリスクが34.4倍高いことが示された。具体的な症例数では、0度群で悪化したのは1名のみであったのに対し、30度群では26名にのぼった。また、より重度の悪化(NIHSS 4点以上の増加)についても、30度群で20名、0度群で1名と顕著な差が認められた。安全性に関しては、懸念された院内肺炎の発症は両群ともに認められず、90日以内の全死因死亡率は0度群(4.4%)が30度群(21.7%)よりも有意に低かった。
結論として、MTを待機しているLVO患者にとって、頭位を0度に保つことはペナンブラの血流を維持し、臨床的な安定を保つための効果的な保護策である。MT待機中の患者は、治療開始直前まで頭位を平坦に維持すべきである。
内的妥当性本研究は、アウトカム評価者が割り当てられた頭位を知らされないPROBEデザイン(無作為化・盲検化評価)を採用したランダム化比較試験であり、臨床試験としての質が高い。プロトコルの遵守状況も詳細に分析されており、10分ごとの頻回な評価によって臨床状態の動的な変化を捉えている。ただし、当初の計画(182名)の半数に満たない段階で、有効性が非常に高いと判断されデータ安全監視委員会(DSMB)によって早期終了されている。早期終了は倫理的には妥当であるが、推定されたハザード比などの統計的数値が過大に算出されている可能性がある。また、頭位そのものを盲検化することは物理的に不可能であるため、現場のスタッフによるケアの差が入り込む余地は完全には排除できない。
外的妥当性全米12か所の認定脳卒中センター(包括的脳卒中センターおよびMT可能施設)で実施されており、一般的なMT実施施設への適用可能性は高い。前方循環だけでなく後方循環の閉塞も含まれている点も汎用性を高めている。しかし、施設間転送(転送元から転送先への移動中)の患者は除外されている。先行研究では、転送中の頭位管理が不適切である可能性が指摘されており、最も待機時間が長くリスクが高いと考えられる転送患者に対して本結果をそのまま一般化するには、さらなる実装研究が必要である。また、救急隊員や搬送チームが日常的に頭位を30度に設定している現状を踏まえると、本研究の結果を実臨床に浸透させるには、多職種への教育とシステム全体の変更が求められる。