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1.論文のタイトルWhat every intensivist should know about type D hyperlactatemia

2.CitationJournal of Critical Care, 88 (2025) 155049

3.論文内容の要約D型高乳酸血症(D-乳酸アシドーシス)は、主に短腸症候群(SBS)患者において、大腸内の細菌が未吸収の炭水化物を代謝・発酵することで発生する稀な状態である。ヒトの細胞はL-乳酸のみを産生するが、大腸に存在する特定の乳酸産生菌(乳酸桿菌など)は炭水化物をD-乳酸へと代謝する。特に、小腸の短縮や機能不全により吸収されなかった炭水化物が大量に大腸へ到達し、さらに大腸が機能している場合にこの現象が顕著となる。

ヒトの体内にはD-乳酸を代謝する酵素(D-2-ヒドロキシ酸脱水素酵素)が存在するが、その代謝速度はL-乳酸の約5分の1と非常に遅いため、産生量が増えると容易に蓄積する。また、大腸内の酸性環境はD-乳酸の代謝をさらに阻害し、蓄積を促進する要因となる。

臨床的な最大の特徴は神経症状であり、意識障害、運動失調、構語障害、歩行障害などが現れる。重症化すると昏睡や痙攣に至ることもある。診断における課題は、一般的な医療機関で使用される血液ガス分析装置や検査機器がL-乳酸のみを測定するように設計されており、D-乳酸を検出できない点にある。そのため、高いアニオンギャップを伴う代謝性アシドーシスがあり、かつ神経症状を呈するリスク患者に対しては、特殊な酵素アッセイやクロマトグラフィーを用いた個別測定を検討する必要がある。

治療の基本は、原因となる炭水化物の摂取制限と、抗菌薬(バンコマイシンやメトロニダゾールなど)の使用による大腸内の細菌過増殖の抑制である。また、重症のアシドーシスに対しては、水分補給や炭酸水素ナトリウムの投与が行われるが、これらに関する確定的なガイドラインは未だ確立されていない。

4.批判的吟味