論文タイトル:Where does the fluid go?
Citation:Annals of Intensive Care (2025) 15:156
論文内容の要約
本論文は、結晶質液の過剰投与が体内でどのように分布し、合併症や死亡の原因となるのかを、ボリューム・キネティクス(容積動態)の観点から解説したレビューです。
結晶質液を投与すると、体内の3つの区画(血漿、速い交換が行われる間質容積Vt1、遅い交換が行われる間質容積Vt2)が順次拡大します。通常、結晶質液は血漿とVt1に分布しますが、短時間に大量の輸液(30分で約1.3~1.5L以上)が行われると、Vt2という「第3の液腔」がオーバーフローのリザーバーとして開き、液体の貯留が始まります。このVt2に溜まった液体は代謝回転が非常に遅いため、数日間にわたる浮腫の原因となります。
過剰な液体が蓄積しやすい部位は、皮膚、腸壁、肺といった容積拡大のコンプライアンスが高い組織です。動物実験では、過剰な輸液が心臓の間質浮腫や低酸素症を引き起こし、致死的な不整脈や組織破壊を招くことが示されています。
また、全身麻酔や炎症状態はこの動態を悪化させます。全身麻酔は利尿を抑制し、リンパポンプ機能を低下させ、毛細血管濾過を促進するため、末梢浮腫を形成しやすくなります。敗血症や子癇前症などの炎症性疾患では、サイトカインの影響で間質圧が低下し、液体がVt2に引き込まれる「吸引効果」が生じます。これにより、全身の浮腫が悪化する一方で、血管内は低容積(低血圧)となり、低アルブミン血症を併発する複雑な状況が生じます。
治療的介入として、高張アルブミン(20%)の使用が挙げられます。これは間質から液体を血管内に引き戻し、リンパ流を刺激して利尿を促すことで、全身の浮腫を軽減させる効果があります。
内的妥当性
外的妥当性