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『言葉の人生』

片岡義男|左右社|2021年8月25日

朗読箇所:「男性とは明確に区別された生き物がいる国」(P.44-46)、「その日本語が原語を超えている」(P.137-139)、「思っていないで答えをくれ」(P.202-204)

国言葉と作家の知的で愉快な関係を思う存分に味わえる、9年ぶりの語学エッセイ。ブルースに登場する人々は、その後どんな人生を送ったのだろう。かつて高級で輝かしく特別だった「ケーキ」という単語は、「ケーキバイキング」に安住の地を得た。「青春」を本気で直訳すると「ブルー・スプリング」になるのか。そして珈琲はいまや「珈琲」のひと言では頼めない……新しい日本語、懐かしい英語。それらをつなぐ、カタカナ語。絶え間なく生まれ、変化し続ける言葉たちに驚いたり、楽しんだり、考えこんだり、時々ちょっぴりぼやいたり。「サンデー毎日」連載に書き下ろしを加えた全88篇を所収、著者の新鮮な驚きと発見に満ちたエッセイ集が、ノスタルジックなビニールカバーの装幀で登場。

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毎日の日常のなかで、時間を作っては、僕はなにほどか創造的な世界について、文章を書いてきた。六十年は続けてきたことだろう。時間を作っては、とたったいま僕は書いた。こににひとつの鍵があるようだ。日常の時間とは区別された、もうひと種類の時間のなかで、僕が使う日本語とは、なにか。『サンデー毎日』での連載の果てに、僕は新たな主題を見つけたようだ。日常とはすべてを異にするもうひとつの現実のなかで、僕が使う日本語とは、いったいどういうものなのか。これについて書くのは厄介なことだろうか。それとも、思いのほか簡単に、およそ千字ほども使えば、ことは足りてしまうものなのかどうか。やってみないことには、なにもわからない。やるほかない。新たな主題を僕が見つけたとは、こういうことだ。(あとがきより)

【目次】

- バッテンボーからビル・ライス・テレビの国へ

- Zicoとジーコはおなじなのか

- ミーティングでペンディングとなる

- すべてが片仮名語になった国とは

- 千差万別という面倒くささをいっきに解決するには26

- のっける気持ちはことのほか大きい

- 思い出は言葉をめぐって

-「珈琲」のひと言ですべてが通じた時代

- いまでは聞かないし見ない言葉

- 男性とは明確に区別された生き物がいる国

- 俺を中心にすべては堂々めぐり

- ブンブンでロカボにノスヒロ

- 僕には読めなかった漢字

- 酒にまつわる言葉について

- 僕はきまり文句を使わない人なのか

- 僕はそこに論理を感じない

- あまりにも素晴らしい出来事

- そしてすべてを水に流しましょう

- コカ・コーラを飲みましょう

- 「最低限の会話能力」とはなになのか

- 彼らのその後の人生は

- 「インイチガイチ」の衝撃を受けとめる

- チャーリー・ブラウンは直球の投手だ

- 日本語にとって「三」とはなにか

- 国際都市で天麩羅定食を食べる

- 六十八年ぶりの日本と日本語

- 深い意味はない、しかし俗世間はよく見える

- 読んでみた。面白かった

- クヨクヨ、イキイキ、オイオイ、グッタリ

- お焼き加減はいかがなさいますか

- 甘からの汁を肴にして

- 男性の存在が前提にされている

- まもなくの発車となります

- 無邪気な直訳はホラーである

- 男子と女子に分かれてせいの順に

- わずか三画のなかに日本のすべてがある

- 外国人たちは日本語に接近している

- 豚肉の生姜焼きとポーク・ジンジャー

- その日本語は原語を超えている

- 大人たちが教えてくれなかった言葉

- ノット・オンリー・バット・オルソー

- 手間は出来るだけ省きましょう

- 街を歩けば謎にあたる

- きまり文句ですべてが間に合う

- 日本語はけっして曖昧ではない

- 彼女を納得させるのは大変だからなあ

- こういう言葉には頭を抱えるほかない

- なんだ、そんなことも知らないのか

- 流れる川の水にすべてを託す

- 戦争の経済的負担はとてつもない額になる

- 日本語は滅びていくのだろうか

- 英語を学ぶ教材としての英字新聞

- 日本語にならない英語というもの

- 「俺」はしぶとく生きのびる

- 頭に「かね」のつく言葉を探してみた

- よろしかったでしょうか

- 丁寧さと正確さ、そしてご理解のはざまで

- 思っていないで答えをくれ

- 日本語能力試験N5に合格するか

- お前はネクタイがいつもゆるんでいる

- 空飛ぶ円盤の時代は過ぎ去ったか

- 歌のなかの女性たち

- 母親をめぐって話はつきなかった

- 「こころ」について学習する

- 進駐軍の残飯の日々

- はるかに遠く子供たちが遊ぶ

- 受話器に飛びついたのは、いつだったか

- スヌーピーが果した役は大きい

- 犬も歩けば棒に当たる

- 花道はもはやどこにもない

- 曇りガラスに必ずこう書いた

- 知らなかった言葉を知るとき

- 人が生きるから人生なんだよ

- ライナスは眼鏡をかけている

- 未来への明かるい希望

- サービスはまだ生きている

- 一拍子、二拍子、四拍子

- かつてはよく使っていたはずなのに

- アカンベーにレロレロバー

- 失敗は七回まで許される

- 自分にとって面白い日本語とは

- 喋る人ではない、考える人なのだ

- 省略しなければやってられない

- バイリンガルはこんなふうに発展する

- 悲惨な現実と幸せな空想と

- 人の意志や態度を表す「腹」という言葉

- 彼女のコロッケ、彼のメンチカツ

- ギョウニンベン

http://sayusha.com/catalog/books/p言葉の人生

企画・朗読:若林恵

録音・編集:山口宜大(Magic Mill Sounds)

音楽:yasuhiro morinaga + maiko ishii

黒鳥福祉センターにて収録