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Description

臨床心理学者の京都大学名誉教授の河合隼雄さんから、詩人の工藤直子さんのエッセイ集『ライオンのしっぽ』(大日本図書)からの一節を教えて頂き、思わず涙してしまいました

工藤さんのエッセイより

" 「散歩のときに、つないでくれる手。ころんですりむいたヒザに薬をぬってくれる手。服を着せてくれる手。ほうちょうをもってジャガイモをむく手、などなど。」 "

"「あのころの風呂は木づくりで、フチが高くて、小さい子は湯船に入りにくい。そんなとき、両脇をかかえあげ、ちゃぽんと入れてくれたのも、父の両手だった。」  "

さらに河合さんより

"こんなのを読むと、工藤さんは父親の手を「見る」と言っても、そこにいつも「触れる」体験のあったことがわかるし、読むほうのわれわれにも、工藤さんのお父さんの温かい手触りが伝わってくる。 「触れる」ことが、完全に心の接触になっているから、われわれも心を動かされるのだ。"

ここから私は思いました

1、三現主義

2、五感で感じる

3、心に触れる

1、三現主義

自分の父も亡くなっているので、工藤さんのエッセイは、私の父の手の形や節々など、ありありと思い出してしまいました。また私は全身アートピーなので、風呂上がりに毎日薬を塗ってくれたその触感も思い出して、思わず涙してしまいました

三現主義は、工学院大学の畑村洋太郎教授が提唱した言葉で、「現場」「現物」「現人(げんにん)」を大切にするという考え方で、トヨタやホンダにおいても実践されている有名な考え方ですが

イノベーションにおいても、めちゃくちゃ大事だなあと思ってます。私は、さらには現場100回とも言っているのですが、とかく請負ビジネスに慣れてる場合、この本当の現場へ通い理解することが大事だとはわかっていても、実践できないということによく直面します

お客様の現場に行くと言っても、それが例えば、システム部門のような間接的な課題を理解してる人だったり、本当のエンドーユーザーではないお客様に聞きに行ってたりで

この工藤さんのようなありありとその情景を浮かばせるくらいに、課題を理解するところまで、食い込むことができれば、それだけで新たなイノベーションの種を知ろうことができるよなあとつくづく思いました

2、五感で感じる

また工藤さんのエッセイを見て思うのは、五感をフル活用されているのが伝わってくる点です。現場100回でも、行けばいいのかというと、それもまた違っていて、行った上で、五感をフル活用して感じることが大事だと思います

コンサル時代には、「で、使ってみたの?」とよく言われました。「あ、すみません、ヒアリングはしたのですが、ぽりぽり」ということもよくありました。

とにかく五感を使って、見る、聞く、触れてみる、やってみる、味わってみる、この工藤さんのエッセイくらいに、情景が思い浮かぶくらいに、突っ込んだ玄蕃100回ができるか、そこが本当に大切だと思いました

3、心に触れる

そしてその先に、心に触れることができたか、という最終目標が出てくるかと思いました。ある意味それは、五感を超えた、その人の背景だったり、生き様だったり、価値観だったり、その行動の深いところにある、心に触れられるかどうか、ということなのかもしれないなあと思いました

Simon Sineckさんのゴールデンサークルの話のように、それを説明する際に、なぜここに存在してるのか?どんな価値観を持ってそれをしようとしているのか?ということを、掘り下げて感じて、さらにはそれを、適切に伝えることで、初めて真の課題をみんなで共有し、取り組むことができるのかもしれない、とも思いました

工藤さんのエッセイは、その時の情景を、読む人がありありと思い浮かばせて、心情面までも伝わり、感動を呼ぶ

そんなところまで、仲間と共に大義まで形作れたら、イノベーションも深く感動を呼ぶソリューションができるなあと、そんなことを思いました

一言で言うと

心に触れるノベーション

そんなことを思いました^ ^

参考:本: 河合隼雄の幸福論 著者:河合隼雄  発行所:株式会社PHP研究所 製作日:二〇二三年五月二十六日 

動画で見たい方はこちら

https://youtu.be/m_mnP77eQ-U