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滋賀県にある、障害のある人たちによる造形表現や現代アート作品を展示するNOMAより、青木惠理子/龍谷大学名誉教授が書かれた、アーティストの曲梶智恵美さんについて書かれた、滋賀県アール・ブリュット全国作品調査研究」からの抜粋に、感動しました

"20年以上もまえに、心理相談室にいった。考えようとすると涙がでて、言葉を発しようとしても涙がでた。  

心理士の先生が画用紙と色鉛筆を用意してくれた。2人で向かい合って別々に絵を描いた。なんにも考えないで描きはじめたことは覚えている。

できた絵を交換した。先生から、いろんな大きさの丸があり、それらがいろんな方向に飛び出しているのが私っぽい、というような言葉をかけてもらったと思う。驚いた。今まで、伝わっていないと思っていたことが、伝わっていたのだと知った。

私の中にあたり前にあることを、やり取りできたことがうれしかった。帰る時には涙が止まっていて、少しだけ心のそわそわが落ちついた実感があった。

頭の中に言葉がなくなったとき、頭の中が言葉でいっぱいになったときは、何も考えず、手を動かすのがいいと思えたのはそこからかもしれない。"

ここから私は思いました

1、非言語コミュニケーションの力

2、身体からのレジリエンス

3、共感が創造の種

曲梶智恵美さんのアート作品は、カラフルで重厚感と温かみがあって、そしてバラエティで楽しい、素敵な作品ばかりで、大好きです。

そんな曲梶さんの葛藤をこのような形で乗り越えてきたのかということに、感動と共にとても学びがありました

1、非言語コミュニケーションの力

曲梶さんが、言葉を使えなくなった時に、絵を使ってコミュニケーションを取ろうとされた、心理士の先生は本当に素晴らしいなと思いました

私の場合は、言葉が出なくなったり、いっぱいになっちゃった時は、スタジオにこもって、ピアノを弾きながら、ひたすら自分の気の赴くままに弾いて、それに合わせて、歌詞のないメロディーを力一杯歌う、ということを、実はよくやっていました

その中から、今につながる曲も何曲か生まれてきたのですが、心の言葉を使わない時に、より感情が爆発して思いもよらない曲が生まれたりもしました

それはきっと、論理的な回路を超えた感情の回路が発露することで、自分自身も癒されるし、そしてそれは他の人も癒すものになるものが創造されるみたいなことが起きているのかと思いました

私の場合は音楽ですが、それはきっとなんでもよくて、編み物をやったり、ビーズをやったり、もちろん絵を描いても、ダンスをしても、言葉が出ないからこそ、身体で表現できるのだと、人間は言葉だけではないのだということを、知っておくことは大切だなあと思いました

アートセラピーのジュディス・A・ルービンさんは、「芸術表現は、個人の無意識の中にあるイメージを象徴的に外在化し、他者と共有する手段である」といわれており、まさにアートはそんな力があるなあと思いました

2、身体からのレジリエンス

以前、伊藤亜紗さんの言われる技術習得のパラドクスという話をしたのですが、まさに身体が主導で心を立ち直らせることもあるんだなあと思いました

逆上がりが論理的にはなぜできるのかを説明できないのに、身体が勝手に習得してその後に頭が論理的に理解するという、頭が全てをコントロールしてるわけではないというパラドクスが、まさに起きていると思いました

言葉が出ない、いっぱいすぎる時は、まずは身体を動かしてみよう、というのはとても良い学びだと思います

私は以前、サラリーマンで一杯一杯の時期には、毎日昼休みにご飯食べてジムに行ってシャワー浴びて13時に帰ってきて仕事始めるということをやってました。不思議と頭が昼から冴えて、大変な仕事や精神状態を乗り切れたことを思い出します

ジョージ・レイコフさんは、「人は身体を通じて環境と接し、言語よりも先に意味を生成している」といっており、センサーとしての身体が実は先なのだ、と教えてくれてます

そう考えると行き詰まったら、身体をとにかく動かしてみる、すごく大切だと思いました

3、共感が創造の種

アートや、音楽や、手芸や陶芸でもなんでもいいのですが、何か新しいものを、自分なりのものを作り上げて、そして誰かと共有するということが、自分自身の心を救ってくれるし、さらなる創造を生み出す種になる、そんなことを思いました

カール・ロジャーズさんは、「人は他者との相互的な共感関係のなかでこそ、自分自身を最も創造的に表現できる」と言っており、仲間の存在がとても大切なことを教えてくれてるなあと思いました

アートというと、孤高なイメージもありますが、見てくれる人がいて初めて完成できるのがアートであると考えると、そこに共感を得られることがどれだけ救いになるかと思いました

心理的安全性ともとても関わることだなぁとも思いました

ということで、一言で言うと

苦しい時には

何も考えず手を動かすノベーション

本当に大切だなあと思いました

そんな話をしています^ ^

参考:NO-MA ARCHIVE  曲梶 智恵美 、「滋賀県アール・ブリュット全国作品調査研究」 (青木 惠理子/龍谷大学名誉教授)https://no-maarchive.com/survey_of_artworks/magarikaji_chiemi/