愛媛・瀬戸内で活躍されており、日本で一握りしかいないコンサートホールの調律を任される腕を持つ調律師の塩見浩和さんの言葉に、イノベーションの秘訣を教えて頂きました
"きちっと、調律してあって、もう絶対大丈夫と思っても、一個二個指摘を受けるんですよ
最終的にその人が思ってる音じゃない音を嫌な音って言うんですよ。で弾きたくないわけなんですよね"
"いかにお客様の気持ちを音にしてあげるか、ってことですね"
"博司さんが弾いて頂いたら、よりこのピアノが仕上がって行きます
あとは一緒に作っていく感じです"
"やっぱりね、弾きこんでピアノは変わって行きますから"
ここから私は思いました
1、共鳴
2、共創
3、余白
1、共鳴
調律師のお仕事って、音叉に従ってピアノの音を一つ一つ合わせていく、そういうお仕事なのかなあと思ってましたが、全く違うことに衝撃を受けました
個人のお宅のずっと使われていたピアノを、その人の癖を生かしながら再生させることや、廃校されて使われなくなっていたピアノでコンサートを開くために、その場所の音の反射や広がり、そして行われるコンサートの内容までも把握しながら、再生していく
依頼をされた方の事情や痛みに徹底的に、共感することから始めるやり方は、まさにデザインシンキングにおけるユーザーへの徹底した寄り添いを、共鳴という形でやられてるのだなあと、思いました
それも、インタビューにある通り、始めた当初の、きっちり仕事をしたはずなのに、"嫌な音"と言われた時の経験が、ここに生きているのかもしれないと思いました
これは、心理学者のカール・ロジャースさんの「他人を理解するということは、その人の内的な枠組みに入ることを意味する。それは、彼の意味世界を、あたかもそれが自分のものであるかのように感じることなのだ」と言われるやうに、ある意味心理カウンセリングの世界にまで入られているのかもそれないと思いました
2、共創
その上で、その人の求めるものに、作り上げていく、という作業は、これまでその人の心の中にしかなかった思いを、ある意味、塩見さんが見えるかして、それを共に創り上げる作業のように思えました
これはまさに、経営学者の野中郁次郎さんの「知識創造理論(SECIモデル)」で言われる、暗黙知を、共同化作業をする中で形式知に変えていき、そこから革新が生まれることの実践として
その人の思いという暗黙知を、音という形式知に変えていくことを、共同でやっていくことをされているんだなあと思いました
3、余白
そしてさらに素敵だなあと思ったのは、そこで出来上がった作品としての新たなピアノを、今度は演奏する方が新たに育てていく余白を与えてくれている、ということです
アートや音楽は、観る人や聴く人がいて初めて完成されると言いますが、その作品が見る人や聴く人のそれぞれのいろんな思いを想起させてくれたり、自分の聴く時代によってまた違う思いを起こさせてくれる、というのが素敵だなと思います
ここからは、あなたがこの作品を育てていってくださいと渡される作品、まるで上質の皮でできたバッグみたいな、そんなピアノなんだなあと、感動しました
イノベーションの世界でも、Fortniteの中で自分のゲームを作ってみんなに楽しんでもらうとか、自分好みのAIエージェントを作っていけるとか、そんな余白から、さらにみんながクリエイトしていける、そんな方向に向かってるような気がします
その先には、きっと、誰もが新しい価値を作れる世界、全世界一世帯あたり一法人化、みたいなことにもつながる素敵なお話だなあと思いました
イノベーションやデザインの作り方、そしてこれからのソリューションのあり方まで、教えて頂いたようなお話でした
一言で言うと
気持ちを音にするノベーション
そんなことを思いました^ ^
参考:NHK Dear にっぽん 島渡る ピアノ調律師 ~愛媛・瀬戸内~ 2025/7/6 https://www.nhk.jp/p/ts/P71P7Q379L/episode/te/4KV8VMYX23/