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編集工学研究所の代表の安藤昭子さんから、哲学者の九鬼周造さんの言葉からの、イノベーターにとても重要な気づきをいただきました

曰く

"現実の世界そのものに対して、我々は驚きの情を禁じえないのである。現実の世界は偶然的存在である。何らかの意味で全体的なものの、単に一つに過ぎぬ。それ故に、我々はその一つが正に存在することに対して驚くのである。 「驚きの情と偶然性」(1939):『偶然と驚きの哲学』九鬼周造(書肆心水)に所収 "

"めったに起こらなそうなレアな事態ばかりが「偶然性」ではない。

現実のすぐ目の前にあるそのことにいかに驚くか、「あたり前」の世界の奥に控える「他にもあり得た」世界を想像し、目前の情景をいかに「あたり前でない」世界として見ることができるか、本来そこに驚きを禁じえないのが人間である、と言っているのだ。"

ここから私は思いました

1、普段の現実一瞬一瞬がセレンディピティ

2、クリティカルシンキングと解釈のループ

3、アーティストとアジェンダシェイパー

1、普段の現実一瞬一瞬がセレンディピティ

セレンディピティというと、偶然に出会った幸せを掴む力のようなことで思っていましたが、実は、偶然の出会いというのは、すでに一瞬一瞬にあるんだということが、衝撃的に心に響きました

パラレルワールドのようなことを考えた時に、実は、今日この時の自分がこのようにあるのは、何億通りもの選択肢の中から、今が選ばれてここにあるのだ

と考えてみると、なぜ、この今の選択肢が選ばれたのか?また、他の選択肢は何があり得たのか?そちらに進んだ場合に、何が起こっていたのか?などと考え始めると

キリがないほどの無限の選択肢を、今ここにこのように選んだこと自体が、セレンディピティを拾ったということにもなり得るのかもしれないと思いました。

そう思えば、自分自身の選択だけではなくて、今とても気持ちの良い風が吹いたとか、晴れ間から木漏れ日が気持ちいいとか、そんな事柄でさえ、素敵なセレンディピティだと思えるなと

そしてそれは、日々の一瞬一瞬を考えて、そして感謝できる、さらには違和感を感じるアンテナがとても磨かれていく、そんな心持ちにつながるなと

それこそがイノベータにとって大事な心持ちなのかもしれないと、目から鱗が落ちる思いでした

2、クリティカルシンキングと解釈のループ

その一瞬一瞬に対して、本当にその選択肢でよかったのか?または、他の選択肢ならどうだったのか?と考えること自体、いわゆる批判的思考としてのクリティカルシンキングを鍛えることにもつながるなと思いました

そして、その批判的思考からの問いに対して、自らの仮説を、解釈としてどう考えるのか?ということもとても大切だなあと思いました

これは、ニーチェが言われるところの、「真実はない、あるのは解釈だけである」というような解釈論に基づいて

実は、更なる無限の解釈をすることができるので、それをセレンディピティだったと捉えるのか、それともなんでもないこととしてやり過ごすのかは、最終的には自分にかかってきていると思います

これは偶然の出来事があった時にも、どう解釈するかでセレンディピティが変わっていくように、普段の一瞬一瞬をどう捉え、どう解釈していくかの積み重ねは、自らがセレンディピティを拾えるのか、または日頃に驚きと問いを立てながら生きていくのか、非常に大きな差になってくるのだろうなあと、改めて感じました。

3、アーティストとアジェンダシェイパー

そして、そいう思考を常日頃されているのが、きっとアーティストと呼ばれる人たちなのかもしれないなあと思いました。

有名なマルセルデュシャンの、便器を美術館に展示した大事件は、まさに、美術館という権威がありしかも解放された空間が、本当にそれで良いのか?というようなクリティカルシンキングと

新たな解釈として、日の当たらない便器というある意味タブーで閉ざされたものこそが、そういう空間にあっていいのではないか?というような、新しい解釈があっても全然いいじゃないかと、言っているように、私には思えます

また、山口周さんが言われている、アジェンダシェイパーという人たちについても、今は当たり前と言われている事柄や行動の中に、本当にそれでいいのか?というクリティカルシンキングと、そして新しい解釈として仮説をぶつけていく、これからのイノベータにも、このような考えは、必須の考え方になるということなのかもしれないとも思いました

ということで、実はセレンディピティや驚きというのは、普段の生活の一瞬一瞬に潜んでいて、それを感じようとするか、またはクリティカルシンキングと解釈ループを自分なりに回すことで、新しい発見や問いを産んで、そういうう動きをするのがアーディストやアジェンダシェイパーと呼ばれる人たちはしているのかもしれない、と、イノベータに必要とされる考え方を教えていただきました

一言で言えば

驚きの情ノベーション

そんな話をしています^^

参考:本: 問いの編集力 思考の「はじまり」を探究する 2024年9月20日 電子書籍版発行 著者 安藤昭子 発行所 株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン

動画で観たい方はこちら

https://youtu.be/CLeBcEt1IjA