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映画『教場Requiem』の脚本家、君塚良一さんの言葉に、私は深く考えさせられました。

曰く

「現代社会では組織も含め、皆が嘘をついたりごまかしたりして生きていかざるを得ない。

それに対して風間公親は冷徹にすべてを見抜いていきます。

そのとき、人はどうするべきか。

それが“真実を受け入れる勇気”なんです。」

この言葉の中に、私はイノベーションの本質を見たような気がしました。

私は、3つのことを思いました。

1、真実は不快である

2、真実を突きつけてくれる仲間と信頼の力

3、みたくなかった現実に向き合える人が未来をつくる

1、真実は不快である

まず感じたのは、

真実というのは、基本的にあまり気持ちのいいものではないんだな、ということでした。

人はどうしても、自分にとって都合のいい物語の中で生きてしまうと思います。

組織も同じで、見たくない現実には蓋をしてしまう。

「まあ大丈夫だろう」

「まだいけるだろう」

そんなふうに思いながら進んでいくことって、あると思うんです。

でも、そのままだと、どこかで止まってしまう。

ここでふと、ニーチェの言葉を思い出しました。

人は真理そのものよりも、生きるための幻想を求める、という話です。

確かに、真実を見るというのは、

自分の思い込みが崩れることでもあって、少し怖いことでもある。

だからこそ、人は避けたくなる。

でも、

イノベーションって、

この「見たくなかったもの」に向き合うところから始まるんじゃないかなと感じました。

2、真実を突きつけてくれる仲間と信頼の力

風間公親のように、

ごまかしを見抜いて、真実を突きつけてくる存在。

正直、できれば関わりたくないと思ってしまうかもしれません。

でもよく考えると、

その人の可能性を信じているからこそ、

あえて厳しく向き合っているようにも見えました。

そこに「信頼」があるんじゃないかと思いました。

もし信頼がなければ、

ただ否定されたとしか感じられなくて、

人は受け入れられないと思うんです。

ここで思い出したのが、社会学者ハワード・ベッカーの考え方です。

人は一人で完結するのではなく、他者との関係の中で変わっていく。

だからこそ、

真実を受け入れる勇気って、

一人で持つものというよりも、

「どんな人と一緒にいるか」によって

支えられているものなのかもしれません。

一人で立つのではなく、

誰かとの関係の中で立てるようになる。

誰かが真実に向き合う姿を見ると、

自分も少しだけ向き合ってみようと思える。

そんなふうに、少しずつ広がっていく。

この感覚は、岡本太郎の「本当に生きるとは、自分に正直であることだ」という言葉にも、どこか通じるものがある気がしました。

一人の正直さや覚悟が、

周囲の人の在り方にも影響していく。

風間のような存在が一人いるだけで、

場の空気や基準が変わっていくように感じました。

そしてこれは、私が普段考えているイノベーターリップルモデルでいう「仲間の存在の大切さ」にもつながっているように思いました。

一人では難しいことも、

信頼できる関係性の中では、少しだけ乗り越えられる。

そんな気がしました。

3、みたくなかった現実に向き合える人が未来をつくる

最後に思ったのは、

これからの時代は、

「みたくなかった現実に向き合える人」が少しずつ増えていくことで、

未来が変わっていくんじゃないか、ということでした。

ここで思い出すのが、科学哲学者カール・ポパーの考え方です。

進歩とは、誤りを認めて修正していくプロセスの中にある、というものです。

つまり、

現実を見ること。

受け入れること。

そして、そこから考え直すこと。

この繰り返しが、前に進む力になる。

すごく当たり前のことなんですが、

それが一番難しいのかもしれません。

AIが進化して、いろんなことが見えるようになっていく中で、

ごまかし続けることは、だんだん難しくなっていくと思います。

でも、

そこに向き合える人が増えていくことで、

新しい価値が生まれていくのではないかと感じました。

イノベーションって、

何か特別なことをすることではなくて、

みたくなかった現実に、少しずつ向き合っていくことなんじゃないかなと思いました。

そして、

その背後にはきっと、

支え合える関係性がある。

その関係性が、少しずつ広がっていくことで、

未来も変わっていくのかもしれません。

一言でいうと、

真実を受け入れる勇気ノベーション。

そんな話をしています。

参考:映画『教場Requiem』

原作:長岡弘樹「教場」シリーズ(小学館)

主演:木村拓哉/監督:中江功/脚本:君塚良一

制作:映画「教場」制作委員会/配給:東宝

※プログラムより