「あいだの生態系研究所」では、生態系におけるあいだの重要性を提唱する「森里海連環学」の理論・哲学を土台に、様々な視点から森里海のつながりや生態系連環を学び、森里海連環学の社会実装・実践への活用契機を探っていきます。
本音声は、2021年11月10日に行われたイベント「あいだの生態系研究所 vol.4:水中からのメッセージ:海に潜り続けて陸の人の営みを想う」のアーカイブです。
海域と陸域の生態系はどのようにつながりあっているのでしょうか。益田氏は、2000年以来、京都府舞鶴湾(20年間・毎月2回)、福井県高浜町内浦湾(17年間)、宮城県気仙沼舞根湾(2011年5月以降・2ヶ月に1回)などで潜水調査を続け、地球温暖化の影響、原発温排水の影響、東日本大震災の影響と回復過程などを記録し続けてきました。本セッションでは、陸域や海上からだけではみえてこない海の中の生態系の視点から人の営みを眺め、生命の究極のふるさと海からのメッセージと共に私たちの未来を考えます。
[ナビゲータープロフィール]
・益田玲爾(京都大学フィールド科学教育研究センター舞鶴水産実験所教授)
フィールド科学教育研究センター里域生態系部門、里海生態保全学分野・教授、舞鶴水産実験所長。
私立武蔵高校・静岡大学理学部生物学科卒.東京大学海洋研究所にて学位を取得し, Dunstaffnage Marine Laboratory (UK),The Oceanic Institute (Hawaii, USA)を経て現在に至る.専門は魚の群れ行動の発達心理学。魚の行動や生態についての素朴な疑問を実験を通して明らかにする、「魚類心理学」の研究を展開してきた。また京都府舞鶴湾や気仙沼舞根湾などをフィールドに、年間合計100回程度の潜水調査を行っている。
・田中克 氏(京都大学名誉教授・舞根森里海研究所長)
1943年、琵琶湖近くの滋賀県大津市に生まれる。京都大学名誉教授。現役時代は、タイ類、スズキ類、ヒラメ・カレイ類など沿岸性魚類の初期生活史を研究。その中で多くの稚魚が水際に集まることを見出し、陸と海の境界域としての干潟や藻場や河口域は不可欠の魚の子ども達が育つ場所であり、同時に陸域の人間活動(暮らしや産業)の影響を最も受けやすい極めて“もろい”場所であることより、源流域から海までの多様なつながりを解き明かして、壊した自然や社会を再生させる流れを生み出すまでをゴールに定めた統合学「森里海連環学」を提唱(2003年)。
そのモデル的フィールドしての限りなく豊かであった(漁業生産、生物多様性共に)有明海の再生と2011年3月11日に発生した東日本大震災からの沿岸生態系の復興とそれに依拠する地域社会の蘇生に関わる調査研究・環境教育などを、「森は海の恋人」運動と「森里海連環学」の協働のもとに進める。
・赤石 大輔(京都大学フィールド科学教育研究センター特定助教)
1978年 群馬県生まれ。金沢大学大学院自然科学研究科博士課程後期 修了、博士(理学)。金沢大学・研究員、NPO法人能登半島おらっちゃの里山里海・研究員、珠洲市自然共生室・自然共 生研究員を務める。域学連携事業の企画立案からNPOの設立・運営、多様な主体の連携による里山保全事業の計画策定など、研究者の枠を超えて様々な業務経験を積む。環境省・近畿環境パートナーシップオフィス勤務、京都大学森里海連環 学教育研究ユニット特定助教を経て2020年より現職。
【あいだの探索・実践ラボについて】
あいだの探索・実践ラボは、これからの時代のヒトと環境の関係性を二元論を超えて問い直し、再生・共繁栄的な未来に向けてコトを起こしていくための探索・実践型の共同体です。
あいだの回復・生成をテーマに、エコロジー×ビジネス×デザインの各領域を横断した学び直しと、各地でパートナーと展開するフィールド体験を通じ、理論・身体実感・風土に根ざしたプロジェクト・事業を起こしていくための運動体を目指しています。
https://aida-lab.ecologicalmemes.me
【一般社団法人 Ecological Memesについて】
エコロジーや生態系を切り口に様々な学際領域を横断する探究者・実践者が群れていく共異体として活動。人が他の生命や地球環境と共に繁栄していくリジェネレーションの時代に向け、個人の生き方やビジネスの在り方、社会実装の方法論を探索しています。