知らざぁ言って聞かせやしょう、ビオロッカらじお!!
この番組はラロッカが聞き手となり、古典芸能おたくのビオレに他ではなかなか聞けない古典芸能の楽しみ方を聴いちゃいます。
今回は人形浄瑠璃(文楽)・歌舞伎『新版歌祭文(しんぱんうたざいもん)』についていろいろ語ります
◆お染久松
【お染のクドキ】
やう/\顔を上げ、
〈お染〉「訳はそつちに覚えがあらう。わしが事は思ひ切り、山家屋へ嫁入りせいと、残しておきやつたコレこの文。そなたは思ひ切る気でも、私やなんほでもえ切らぬ。あんまり逢ひたさ懐しさ。勿体ない事ながら、観音様をかこつけて、逢ひにきたやら南やら、知らぬ在所も厭ひはせぬ。二人一緒に添はうなら、ままも炊かうし織りつむぎ、どんな貧しい暮しでも、わしや嬉しいと思ふもの。女の道を背けとは、聞へぬわいの胴欲」
と恨みのたけを夕禅の、振りの袂に北時雨、晴間はさらになかりけり
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〈お染〉「添はれぬ時は死ぬるといふ、誓紙に嘘がつかれうかいなふ」
〈久松〉「ハアたつてもうせば主殺し。命に代へてそれほどまでに」
〈お染〉「思ふが無理か女房ぢやもの」
◆久作の説得
「先に買うたお夏清十郎の道行本。嫁入りのきわまってある、主の娘をそそなかすとは、道知らずめ、人でなしめ、トサこりやコレ清十郎が話ぢや/\、話ぢやわいの。
コレお染様ではない、この本のお夏とやら。清十郎を可愛がつて下さるは、嬉しいやうでエ、恨めしいわいの。ア若い水の出端には、そこらの義理もへちまの皮と投げやつて、こなさんといつまでも、添ひ遂げられるにしてからが、戸は立てられぬ世上の口ぢやわい。エ、あの久松めは辛抱した女房嫌うて、身上のよい油屋の婿になつたは、アリヤアレ、栄耀がしたさぢや皆慾ぢや。人の皮着た畜生めと、在所は勿論大坂中に指さされ、人交りがなりませうかいの。
コレ/\/\ここの道理を聞分けて、思ひ切つて下され。コレ拝みます/\、拝みますわいの。」
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〈久松〉「オヽよう御合点なされました。私もふつつり思ひ切り、おみつと祝言致しまする」
〈お染〉「そんならそなたも」
〈久松〉「お前も」
と互に目と、目に知らせ合ふ心の覚悟は、しら髪の親仁。
〈久作〉「アノさつぱりと思ひ切つて、祝言をしてたもるか」
◆お光との祝言、婆の登場
脱がすはずみに、こうがいも抜けて惜しげもなげ島田、根よりふっつと切髪を、見るに驚く久松、お染、久作呆れて、
「こりやどうぢや」といふ口おさへて、
〈お光〉「アヽコレ申し、父様もお二人様も、何も言ふて下さんすな。
最前から何事も残らず聞いてをりました。思ひ切つたと言はしやんすは、義理に迫つた表向き。
底の心はお二人ながら、死ぬる覚悟、サア死ぬる覚悟でゐやしやんす母様の大病。どふぞ命が取りとめたさ、わしやモウとんと思ひ切つた、ナ、切つて祝ふた髪形、見てくださんせ」
と両肌を、脱いだ下着は白無垢の、首に掛けたる五条袈裟、思ひ切つたる目の内に、浮む涙は水晶の、玉より清き貞心に。今更何と詞さへ、涙呑み込み呑み込んで、堪ゆるつらさ久松お染。久作も手を合せ
「何にも言はぬ、この通りぢや/\。女夫にしたいばつかりに、そこら辺に心も付かず、莟の花を散らして退けたは、皆俺が鈍なから、赦してくれ」
も口の内、聞こへ憚る忍び泣き
〈お光〉「アヽ冥加ない事おつしやります。所詮望みは叶ふまいと、思ひの外祝言の盃する様になつて、嬉しかつたはたつた半時、無理に私が添はふとすれば、死なしやんすを知りながら、どふ盃がなりませふぞいなア」
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『泣き声せじ』と食ひしばる四人の涙八つの袖、
榎並八ケの落とし水、膝の堤や越へぬらん
◆お染の母
「コレお染。野崎参りしやつたと聞いてあんまり気遣ひさ。イヤ気慰みによからうと跡追うて来てなに事も残らず聞いた。夫婦の衆の親切、おみつ女郎の志。最前からあの表で、私や拝んでばつかりゐましたわいなう。」
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「オヽ心有りげなこの早咲、譬へて言へば雨露の恵みを受けぬ室咲は、しぼむも早し、香も薄い。
盛りの春を待つといふ二人へのよい教訓、殊更内に口さがない者もあれば、何かに遠慮せねばならぬ。
幸ひわしが乗つて来たあの駕籠で、コレ久松、そなたは堤、お染は船。別れ/\に去ぬるのが世上の補ひ、心の遠慮」
※文章は、超便利サイト「床本集」および「文化デジタルライブラリー」([詞章]のタブをクリック!)を参照しました。
※次回、最終回は2月28日(月)を予定しております。乞うご期待!
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