本日のプレイリスト:https://spoti.fi/3tQ7fjO
(今回のメンバー:キョン、やすお、ソキウス)
その感覚は「エゴ」由来のものかもしれない。
今回は、この番組でも以前取り上げた「コモン・ミュージック」[小泉 2007]【参照:出題者回(前半)( https://spoti.fi/2STzBJQ )】の概念を用いながら、もはや新世代ではなくなった「おんたま」メンバーが、文字通りの新世代にとってのコモン・ミュージック感覚を想像してみる回。
今回のテーマにうってつけ過ぎたキョンの「アニソン老人会」という企画を例に出しながら、このことについて考えていきます。
初めに、我々より下の世代(現在の20代前半以下)が聴いているであろう音楽はどのようなものだろうか想像することはあるかどうかを各々に尋ねます。
まずはやすお。
普段の音楽生活では自身が触れてきたコンテンツの影響が大きく、そこまでそれ以外の「世界」のものを意識することは少ないと答えますが、ことイントロクイズでとなると、自身とは違う世代に対して「今自分が聴いてるものとはちょっと違うんだろうな」という意識の差があります。
新世代向けと特に謳う「おんたま」の場合は、そのことを意識せざるを得ないという考えです。
続いてはキョン。
過去に最新楽曲への苦手意識について語っていたキョン【参照:「リアタイ/後追い」回( https://spoti.fi/3soo2aQ )】は、下の世代が聴いているであろう音楽への感覚を持っているかどうか「自信が無い」とのこと。下の世代がより聴くであろう音楽を知ろうとしてはいますが、「自分ごとのように思えてない」、そして新世代に対して「寄り添えきれてない」だろうという感覚を語ります。
この回答を受けてソキウスは、今振り返ってみて、イントロクイズのサークルの主宰を始めた頃に、そのような違う世代へのコモン・ミュージック感覚を想像できていただろうかをキョンに尋ねます。
活動当初の頃は追えていると「思っていた」が、自分の感覚が全てではないと「気づいた」とし、自身の最新楽曲との向き合い方が「マイノリティ」だったために当時から「寄り添えきれて」なかったのではと振り返ります。
ソキウスはこの寄り添えなさを「ノスタルジー」的なものとして考えましたが、キョンとしてはそれは「自分の通ってきてる道は皆通ってきてる」だろうという、キョン曰く(現在はある程度は向き合えていると留保したうえでの)「エゴ」と呼ぶような感覚でした。
ここでソキウスはもしかしたらそのような「エゴ」とも関連するかもしれないと、キョンが行った「アニソン老人会」という企画を話題として出します。
最初にキョンは「老人会」という言葉をあえて使った理由と、この企画の主旨を説明。そしてこの企画を開催した理由として挙げたのが、キョンが自身と同世代 or 少し下の世代に対してアニソンを出題することが多く、そのような出題をした時の参加者の反応を受けてのキョンの思い。
特に20世紀のアニソンに対する下の世代の反応を見てしまうと、キョンは一昔前の楽曲を下の世代に向けて出題することにハードルを感じることがあり、そこにキョン自身の「老人会」的なアニソンが好きという思いが重なったことで、そのような楽曲を「放出する場」として「若手を意識しない」場であるこの企画を設定したと語ります。
ソキウスは先ほどまでの対話の内容と結びつけて、そのようなキョンの企画は「エゴ」によるものなのかを質問。
「老人会」的メンタリティとキョン自身のアニメ視聴経験は噛みあわないかもしれないと思いつつも、先ほど挙げたような理由から企画を開催したのでそれは「エゴ」かもしれないとキョンは答えます。
キョンの「皆通ってきてる」だろうという感覚は他の様々な論点【参照:アニソンの「基礎」回(前編( https://spoti.fi/34kbJVd )、後編( https://spoti.fi/35PgfeO ))】と繋げることが出来るだろうとソキウスは言及したうえで、ひとまず今回はやすおにキョン的な動機がどの程度自身の中にあるかを尋ねます。
これに対しては、やすお曰く「そこまでない」とのこと。その理由として、自身の中では最新楽曲に比較的「食らいついている」と感じていること、そして現在供給されているコンテンツ量の多さを挙げ、キョンほどは懐古の気持ちに至る「余裕」が無いと答えます。
このやすおの感覚を踏まえて再度キョンに、(キョンが自身の出題の実情で挙げたよりも年齢が下の)新世代に対して「老人会」的な楽曲を出題することを躊躇するかどうか質問。
キョンは「無くはない」と答え、キョンの世代からすれば「当たり前のように」知っているという感覚が新世代に「共有されてなかったらどうしよう」という不安と、それによる出題への躊躇が多少あることを明かします。
この回答を受けてソキウスは、キョンが抱く不安は逆に新世代側でも似た状況が起こりうることを指摘。キョン自身が新世代だった頃に、キョン同様に上の世代が抱いていたかもしれない感覚を今自身が追体験している可能性を提示。
さらにここで過去の回で引用したインタビューと繋げて、当時の自身の肌感覚【参考:批評回(後編)( https://spoti.fi/3eqrcER )】を過度に適用することの危うさをここまでの内容に即した形で再度提示したソキウス。
キョンも自身と違う感覚を持つ人たちに対して「一方的に当たり前だと言うこと」への不安を再度言語化します。
【参照:「その人にとって何かが『ネイティブ』になること」の参考として中田ヤスタカのインタビュー[金子 2018]を引用した「JAM Project延長戦」回( https://spoti.fi/3CCauNq )、「同時代性」の参考としてTWEEDEESのインタビュー[三宅 2016]を引用した「『オールジャンル』の難しさ」回( https://spoti.fi/2X1JNBO )】
最後にここまでの内容を踏まえて、主宰であるキョンにこれから「おんたま」としてどのような形で新世代と向きあうのか考えを聞きます。
キョンは「まずは参加していただかないと意味が無い」と語り、参加実現に向けての困難性や自身の「エゴ」との葛藤といった含みを持たせながら、例えば他のイントロクイズの場で新世代が聴いていそうな楽曲の傾向を探るなどの行為をすることで寄り添っていく姿勢を示します。
ソキウスはキョンの姿勢に同意はするものの、ここで抱いている葛藤は、新世代側から見れば「ネイティブ」ではないことによって生まれる不安を引き起こしかねないという要素が「老人会」的な企画を開催しようとした意図の中に含まれているので、そのような「エゴ」を持ったまま運営をしてしまうと、わざわざ新世代向けと銘打って活動する必要性が無くなることに結果として繋がるのではと指摘。
キョンもこの指摘に同意し、そのような状態のままでは「新世代向けのサークルではない」と断言します。
我々「おんたま」は、このようなことを日々考えながら今後も活動していきます。
【本日の一曲】
毎回最後に1分以内で今紹介したい1曲を持ち回りで語ってもらう「本日の一曲」。
今回はキョンが、一見「世代」ではなさそうな楽曲を紹介。
結果、語りきれませんでした。
【今回のキーワード】
世代/コモン・ミュージック/寄り添う・寄り添えきれてない/ノスタルジー/「エゴ」/アニメソング/「アニソン老人会」/「ネイティブ」/同時代性/おかあさんといっしょ
【参考資料】
金子厚武, 2018, 「中田ヤスタカが、世界の音楽シーンから見た邦楽の今後を語る」, CINRA.NET(2022年2月26日取得, https://www.cinra.net/interview/201803-nakatayasutaka).
小泉恭子, 2007, 『音楽をまとう若者』勁草書房.
三宅正一, 2016, 「流行と同時代性は違う。『王道』を掲げるTWEEDEESのポップス論」, CINRA.NET(2022年2月26日取得, https://www.cinra.net/article/interview-201607-tweedees).