(今回のメンバー:やすお、ナル、ソキウス)
歴史をどのように引き受けるか。なぜなら、歳はとるので…
今回は、前回の音楽生活的な「老後」を想像してみる回( https://spoti.fi/3bgmhZa )の延長戦。
前回「もやもや」していたところへ補足を入れながら、引き続きこのテーマについて考えていきます。
前回参照したミクロ/マクロ両側面のデータや言葉を一度さらった後、ソキウスはまずナルに前回収録からある程度時間が経ったこの段階で考えたことを尋ねます。
ナルは、前回の「どんな音楽を好きなのか」への回答として挙げた「10年代」の理由を自分なりに考えてみたとのこと。それは、この年代の楽曲に「キャッチー」で「耳の印象に残りやすい」ものが「多くなった」から。ナルの言うキャッチーさを構成する主なものとして、(主にアニソンの動向として)BPMの速さや「強い」楽曲を多く制作する作曲家の存在を挙げました。
これに対してソキウスは、90年代などでもこのようなキャッチーさは見いだせると思われるので、この特徴、そしてそもそものナルが挙げた好きな理由は10年代だけに特有なものなのかと返したことで、ここでの理由の探求はいったんストップに。
続いてやすおに、前回「もやもや」を感じていた音楽ライター・レジー氏(@regista13)の言葉、特に「ちゃんと老害になる」について、改めて現在どう感じているかを質問すると、前回と似たような感触。
それを受けソキウスは前回の補足として、レジー氏の「普通の加齢のプロセスが『老害』という言葉によって過剰にネガティブに捉えられるのが今の社会」(2022/5/25 21:24のtweet)だという言葉をきっかけにして、老害という言葉に付いたマイナスイメージについてここで焦点化。
(補足元についての詳細は前回のキャプションをご覧ください。)
そのイメージでの理解だけだと、好きなものや「若くあればいい」への「固執」や好みとの「妥協」のみで加齢による環境の変化を捉えてしまう可能性をここで問題にします。
年齢を重ねたことで、自身にとってのリアルタイムの感覚で歴史を振り返ることが出来るその立場で「今の時代と自分の好みの接点を見つける」ことを試みること。そして、そもそもリアルタイムで経験しているものは年齢層によって違うのだから、その年齢層間でのズレを(単純な「俯瞰」の視点ではない)歴史性の観点で引き受けることだろうと考えたソキウス。
【参照:リアタイ/後追い回( https://spoti.fi/3soo2aQ )】
好みと「向き合う」方法の中でも、(何かを好きな理由として自身が捉えやすい)自発的な意志による「内的」な制約だけでなく、ここまでに挙げた歴史性や、音楽生活の調査回[≪対話編≫(後編)( https://spoti.fi/3nUDUQM ) ]で言及した社会階級的な要因といった「外的」な制約も考慮に入れて考える必要があるだろうという形でこれまでの内容を言い換えました。
その上で再度ミクロ/マクロな側面を往復しながら考えてみると、調査の分析で示された「10代後半から20代前半に好きだった音楽が自身の最も好きな音楽として表明されることが多い」というアイデンティティの観点が歴史性などと同様に考えることが出来るものとしてここで浮かび上がってきました。
(この点は今回の終盤で再度話題に挙がります。)
ここまでを踏まえて再度やすおに尋ねると、自分の好きなものの「言語化」の「取り組み」が必要だろうというやすお自身の現在の状態は、まさに「自分は何がほんとに好きだったんだっけ」状態に陥っているのではないだろうかと答えます。
これにソキウスは、ここまでに挙げた一つないしは複数の観点を用いながら考えてみる可能性について言葉を残しました。
ここで歴史性に関係する論点として、ソキウスは前回ナルが述べた「○○っていう年代・ジャンルが好き」っていう感覚は自分の中に最新以外ではあまり無く「断片的」に好きになる状態、今回の内容に即すのであれば、「自分がハマった」っていう内的な制約による選択の要素は確かに存在するが、そこには社会階級的な側面や歴史性といった外的側面があまり意識されていない状態について何を考えたかナルに問います。
これにナルは「リアルで生きてきたその歴史的背景」が「欠如」していたと、まさにこちらも「自分は何がほんとに好きだったんだっけ」の感覚を経験した様子。そしてそれに対する答えの「ヒント」は得られたとして、自身が好きなものとして受容してきたB'zや乃木坂46といった「具体的な」経験をどんどんと出す「就職活動の自己分析」のような作業の必要性をここで述べました。
この回答を受けてソキウスは、内的なものだけでなく外的なものも意識すること(さらに、リアタイと後追いそれぞれで得られる経験の違いを意識しておくこと)はイントロクイズの出題者としても活きてくるだろうと持論を展開。ナルもリアルタイムで経験したものと外的な制約とを自身の中で突き合わせることで生まれる出題者の独自性については、「ただ普通の情報」だけでない解説ができるだろうという点で同意します。
この回の最後にソキウスは、先ほど述べたアイデンティティの観点、つまり音楽が青年期のアイデンティティ形成に関係し、好きな音楽を「表明」することが他者との差異化や同質化に繋がるという観点について少しだけ触れます。
その点に触れる上で外すことが出来ないだろう質問としてソキウスが提示したのは、「自分の聴いている音楽(ミュージシャンやジャンル)が、他の人の聴く音楽よりも優れていると思いますか」[青少年研究会 2016: 2]という質問。
この質問を調査回で問わなかった理由にも言及しながら、この項目の調査結果を示します。
それは音楽ジャンルによる影響はほぼ見られず、10代後半だけが「優れている」という回答の率が「劣っている」「そんな風に考えない」よりも多いということ。そしてその傾向としては、年齢が上がるとその率が徐々に減少し、20代以降ではそもそも統計的に有意ではなくなるということ。[南田ほか 2019]
この調査結果に対してやすおは「人生経験」の差、ナルはむしろ歳を重ねるほど「優れている」感覚の比率が高くなると思っていたことをここでは挙げましたが、それらの意見が示す論点のずれについて語るためには、自分の聴いている音楽が優れているという感覚をもたらすその要因についての研究の蓄積を参照する必要があるため、この回ではひとまずここまで。
音楽生活的な「老後」を調査結果や言葉を用いながら想像してみることで、自身を取り巻く(自発的な意志だけではない)外的な制約の存在が浮かび上がり、さらにはその外的なものも様々な観点で考えることが出来るという前回と今回の内容は、イントロクイズの出題者のより善いあり方を今後考えていく上でも重要になるのではないのでしょうか。
【参照:イントロクイズの「倫理」も話題になった「音源量」回[(前編)( https://spoti.fi/3qzfoqr )、(後編)( https://spoti.fi/3637Nco )]】
【本日の一曲】
毎回最後に1分以内で今紹介したい1曲を持ち回りで語ってもらう「本日の一曲」。
今回はナルが、2000年代前半のアニメ主題歌を紹介。
ザ・Beingです。
【今回のキーワード】
最新の流行/2010年代の音楽/キャッチー/歴史性/社会階級/好みを決定する内的/外的な制約/アイデンティティ/イントロクイズの出題者と外的な制約への意識/「優れている音楽」という感覚とアイデンティティ/『探偵学園Q』/岸本早未
【参考資料】
南田勝也・木島由晶・永井純一・小川博司編著; 溝尻真也・小川豊武著, 2019, 『音楽化社会の現在: 統計データで読むポピュラー音楽』新曜社.
青少年研究会, 2016, 「『都市住民の生活と意識に関する世代比較調査』単純集計結果(16~29歳)」, 青少年研究会 Japan Youth Study Group, (2022年7月30日取得,http://jysg.jp/img/20160331_1629.pdf).