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≪設例1
ケース2 戸籍あり、住民票職権消除≫

Q14:設例1ケース2の場合、司法書士は甲にどのようなアドバイスをすべきか。

A14:司法書士は次の3種類の管理人の選任申立が可能である旨を伝えるべきである。

① 所有者不明土地管理人(民§264 の2)→Q15~Q28 へ

② 管理不全土地管理人(民§264 の9) →Q29 へ

③ 相続財産の清算人(民§952) →Q30、31 へ

このケースの場合、訟務一郎の生存は確認できたが、住所が不明であるので所有者不明土地管理人、不在者財産管理人の選任が考えられる。更にこの土地の管理が不適当であることによって甲の権利等が侵害されているので管理不全土地管理人の選任も考えられる。

実際にどの財産管理人を利用するかは、手続の目的、対象となる財産の状況や、管理人の権限等の違いを踏まえ、個別具体的なケースに応じて、適切な制度を申立人自身が適宜選択することが可能とされている。司法書士にはこの制度選択に際してのアドバイスが期待されていることになる(14 頁「主な財産管理人制度一覧表」参照)。

ケース2
方法①所有者不明土地管理人選択の場合

Q15:所有者不明土地管理命令申立の手続きとはどのようなものか。

A15:所有者不明土地管理命令申立の要件等は以下のとおりである。

・申立人:利害関係人(民§264 の2Ⅰ)

・管 轄:不動産の所在地を管轄する地方裁判所(非訟法§90Ⅰ)

・要 件(民§264 の2):

① 所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地(土地が数人の共有に属する場合にあっては、共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地の共有持分)があること

② 申立人が利害関係を有すること

③ 必要があること

Q16:甲は購入希望者として所有者不明土地管理命令申立ができるか。

A16:その購入計画に具体性があり土地をより適切に管理しようとするケース等では利害関係人と認められ得ると解されている[1]。その結果、設例1のように将来的に買い受ける可能性があるという程度では利害関係があるとはいえない。

Q17:甲は時効取得者として所有者不明土地管理命令申立ができるか。

A17:できる。

所有者不明土地管理人は登記義務者たる土地所有者の管理処分権の行使の一環

として、土地の所有権の移転の登記を申請する権限も有すると解されている。そ

のため、対象となる土地を時効取得したと主張するものは、その所有権の移転の登記を求めるため利害関係人として所有者不明土地管理人の選任の請求ができると解されている[2]

Q18:甲以外の者が所有者不明土地管理命令申立をすることはできるか。

A18:国の行政機関の長又は地方公共団体の長も申立権者になることをアドバイスすべきである。

国の行政機関の長又は地方公共団体の長はその適切な管理のため特に必要があると認めるときは所有者不明土地管理命令の請求をすることができる(所有者不明土地特措法§42Ⅱ)。

Q19:所有者不明土地管理人選任までに特別な手続がなされるか。

A19:裁判所は次の内容の公告をし、その期間が経過した後でなければ所有者不明土地管理命令をすることができない(非訟法90Ⅱ前段)。その期間は1か月を下ってはならず(同項後段)、公告に際し、裁判所は具体的な期間を定めることになる。

① 所有者不明土地管理命令の申立てが、その対象となるべき土地又は共有持分

についてあったこと。

② 所有者不明土地管理命令をすることについて異議があるときは、所有者不明

土地管理命令の対象となるべき土地又は共有持分を有する者は一定の期間内に

その旨の届出をすべきこと。

③ ②の届出がないときは、所有者不明土地管理命令がされること。

この公告は所有者不明土地の所有者の所在を裁判所が探索するとともに、所有

者不明土地の所有者に対する手続保障を図るためであると解されている[3]

 

Q20:所有者不明土地管理人にはどのような人が選任されるのか。

A20:裁判所は、所有者不明土地管理命令をする場合には、当該所有者不明土地管理命令において、所有者不明土地管理人を選任しなければならない(民§264 の2Ⅳ)。

所有者不明土地管理人は、他人の土地を適切に管理することを職務とするもの

であり、その職務内容に照らしてふさわしい者が選任されることになる。

「どのような者を所有者不明土地管理人として選任するかは、個別の事案にお

いて管理人が行う具体的な職務内容を勘案して裁判所が判断することになるが、

例えば、処分の是非等について専門的な判断が必要となるケース(売却代金額の

相当性の判断を要するものや、数人の者の共有持分を対象として管理命令が発せられ、誠実公平義務の履行を確保すべきもの等)では、弁護士・司法書士であるものを選任することが考えられる。また、境界の確認等が必要となるケースでは土地家屋調査士である者を選任することが考えられる。」とされている[4]

なお、衆議院法務委員会及び参議院法務委員会における附帯決議では、政府が

本法の施行に当たり格段の配慮をすべき事項として、「所有者不明土地等の新た

な財産管理制度の諸施策を実施するに当たっては、司法書士や土地家屋調査士等の専門職の積極的な活用を図る」ことが挙げられている(第204 回国会閣法第55号)。

Q21:所有者不明土地管理人が選任された場合その効力はいつ発生するか。

A21:裁判所は、所有者不明土地管理命令を、申立人並びに所有者不明土地管理人に告知しなければならない(非訟法§56Ⅰ)が、所有者不明土地等の所有者に告知する必要はない(非訟法§90ⅩⅡ)。そして、所有者不明土地管理命令の効力は、所有者不明土地管理人に告知することによってその効力を生ずる(非訟法§56Ⅱ)。

Q22:所有者不明土地管理人が選任された場合どのように公示されるのか。

A22:所有者不明土地管理命令があった場合、その管理処分権が所有者不明土地管理人に専属する(民§264 の3Ⅰ)等の法的効果を生ずる(Q24
参照)ことから、その旨を公示するために、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、その対象とされた土地又は共有持分について、所有者不明土地管理命令の登記の嘱託をしなければならない(非訟法§90Ⅵ・共有手続規則§13)。

不動産登記簿における登記の記録のあり方等、その詳細については、今後通達

等において明らかにされる予定である。

 

Q23:選任された所有者不明土地管理人にはどのような権限が認められるか。

A23:所有者不明土地管理人には「所有者不明土地等」の「管理処分の権限」が認められる。

(1)「所有者不明土地等」とは具体的には①所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分、②所有者不明土地管理命令の効力が及ぶ動産、③①②の管理、処分その他の事由により所有者不明土地管理人が得た財産(売却代金等)

をいう(民§264 の3Ⅰ)。

(2)「管理処分の権限」の行使のために、裁判所の許可が不要な行為と裁判所の許可が必要な行為とがある。裁判所に権限外行為許可を求める場合の申立書につき、(参考書式4)参照。

一 裁判所の許可が不要な行為とは、①保存行為又は②管理不全土地等の性質

を変えない範囲内での利用・改良行為である(民§264 の3Ⅱ)。

二 裁判所の許可が必要な行為とは、上記①②の範囲を超える行為である(民

§264 の3Ⅱ)。

[1] 村松秀樹・大谷太 前掲書172 頁

[2] 村松秀樹・大谷太 前掲書173 頁

[3] 村松秀樹・大谷太 前掲書186 頁

[4] 村松秀樹・大谷太 前掲書174 頁