Listen

Description

今年のゴールデンウィークは観光地を含めてすごく混雑しましたね。
コロナ明けということで、4年ぶりに行楽地に遊びに行ったなんて方も多かったのではないでしょうか。
そんな中、5/5に石川県で震度6強の地震が発生しました。

被害はそこまで大きくはなかったようですが、なんにせよ震度6強であれば大地震といってもいい揺れが観測されています。

ということで、今回は自然災害時の労務管理についてお話をしていきます。

さて、さっそくですがクエスチョンです。あなたの身の回りの職場環境では、事業場やビル内で地震が発生した場合の影響を事前に想定していますか?

ちょっと具体的なトラブルをイメージしてみましょう。

電話やインターネットが繋がらない
停電、断水、ガスの供給が止まる
多数の負傷者が出ていても、病院が受け入れてくれない
出張、営業に出ている従業員の居場所がわからない
公共交通機関のマヒ
物資の不足

ほかにも書ききれないほどの問題が発生するかもしれません。

では、本題に入ります。

1. 自然災害が発生した場合のお給料
地震、台風などの自然災害における非常時の費用が必要な場合は、労働者は使用者に働いた分である既往の労働に対する賃金を給料日である支払い期日前であっても支払わなければならないと労働基準法に規定があります。
非常時の規定には疾病、災害、出産などが定められており、疾病、災害には業務上の疾病や業務外のケガに加えて、洪水などの自然災害の場合も含まれます。
家族が被災し、避難地域に指定されるなどで住所の変更を余儀なくされる場合は非常の事態に該当します。
給料が月給である場合は働いた分の給与は日割り計算して算定をしますが、歩合制や出来高制など賃金締め切り前に計算することが難し場合は使用者が概算した金額を支払えばよいとされています。

2.災害で、お給料の支払いが遅延する場合
自然災害が原因となり事務用品が破損したり、経理担当者が出勤できずに給与計算ができなくなるといった事態も想定されます。
非常事態で労働者への賃金支払いが遅れる場合、働いた期間の給料を受け取る権利は発生しているため「毎月、一定期日でお給料を支払わなければならない」という賃金支払いの原則に抵触する可能性があります。
どうしようもない状況だとしても使用者には最善の努力を求められます。
過去の東日本大震災や、熊本地震、西日本豪雨などにおいても、事業場の倒壊、資金繰りの悪化、金融機関の機能停止が生じた場合でも賃金支払いの義務が減免されることはありませんでした。

3.災害時の休業手当
自然災害で道路が混雑し、資材が搬入できない、顧客企業が被災し、納品が不可能など業務に甚大な被害が生じるかもしれません。
業務継続が不可能となり、労働者に休業を命じた場合は休業手当の支払いの義務が労働基準法で定められていますが、天災事変などの不可抗力が生じた場合は使用者の休業手当の支払い義務は免除されます。

不可抗力とされる要件は
① 原因が事業外部より発生した事故
② 通常の経営者として最大の注意を尽くしても避けることができない事故
の2点です。
大規模地震や水害で事業場が直接的な被害を受けた場合は使用者に責任のある休業には該当しません。しかし、事業場が被害を受けておらず、取引先などが被災したことによる事業継続の不可は、取引先への依存度や代替手段の可能性などを総合的に判断したうえで、使用者側に責任のある休業と判断されるケースもあります。
ちなみに、休業手当は平均賃金の60%を支払うこととされています。

4.従業員が行方不明になった場合の給与
賃金は労働基準法により労働者に直接支払うことが原則とされています。
自然災害によって行方不明になった場合も、給与はそのまま本人の口座に振り込むことで問題はありません。
口座振り込みを利用していない従業員が行方不明になった場合は、賃金請求権の時効である2年間は、いつでも行方不明者に賃金を支払えるように準備をしておくこと、賃金を受領不能であることを法務局に申請し、賃金債務を消滅させるために弁済の供託を行うことが必要となります。
5.従業員が死亡した場合の賃金、退職金
自然災害で従業員が死亡した場合は、7日以内に賃金を支払う必要があります。支払先となるのは配偶者、子、孫、父母、祖父母、兄弟姉妹のうち、遺産相続人となるものです。賃金の請求者が遺産相続人であるかを戸籍謄本などで証明することができない場合は、賃金の請求があったとしても支払いをする必要はありません。
退職金の場合は、死亡した社員の配偶者、子、孫、父母、祖父母、兄弟姉妹の順に権利が繰り下がります。労働災害の場合も遺族給付の受給権者が死亡した場合は他の遺族に受給権が転給しますが、兄弟姉妹が死亡している場合は、兄弟姉妹の子供といったように順位が繰り下がります。

6.災害時の残業代

労働基準法で定められている基本的な労働条件は週40時間1日8時間労働です。
残業をさせる場合は、従業員の代表との書面による協定を締結し、労働基準監督署に届け出を出すことで時間外労働が認められます。労働基準法36条のサブロク協定ですね。

地震や台風、豪雨などの災害が発生した場合は、行政官庁の許可を受けて必要の限度において労働時間を延長することが可能となります。緊急事態の場合は事後報告も認められています。
しかし、非常事態だとしても時間外労働に対する割増賃金の支払い義務は発生します。勤務を延長した場合は算定基礎日額の25%、休日出勤の場合は35%、月残業が60時間を超えた場合は50%以上の支払いが必要です。

災害時の緊急連絡などで職場に待機をさせる場合は労働時間よりも手待ち時間の方が長くなりますが、待機をしている時間も労働時間として認められます。

7.災害を理由にした採用内定の取り消し

採用内定時に地震や台風などの自然災害で事業継続が困難となった場合は内定を取り消さなければならなくなります。
自然災害は採用内定時に知ることができず、予想できないような事実です。しかし、内定の取り消しには根拠を持つ必要があるため、採用内定者に送付する内定通知書に、あらかじめ内定取り消し事由を具体的に例示列挙し、「地震台風などの自然災害が発生し、事業継続が困難である場合」を付け加えておくことが必要となります。

ただ、自然災害は企業にとってはやむを得ない措置ですが、内定をもらった学生には落ち度が何もありません。自然災害が原因だとしても、事業継続が困難となった事実は経営上の事由と捉えられるため、整理解雇の4要素が必要となります。

・人員整理の必要性
・解雇会費の努力
・人選の合理性
・解雇手続きの妥当性

4つの要素を満たさなければ解雇権の乱用として解雇が無効になった事実もあるようですが、現在は程度や状況を総合的に判断する事例も増えているそうです。

今回は労務行政研究所より発行された自然災害時の労務管理の実務を参考にしています。