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ジョブ型雇用社会とは何か。読書感想と解説。

 

今回は、浜口圭一郎さんという方の書いた「ジョブ型雇用社会とは何か。正社員体制の矛盾と転機」岩波新書刊行の書籍についてかみ砕いてお話をしていきます。

  

ジョブ型雇用とは職業、仕事に賃金が割り当てられている雇用形態を指す言葉です。

対義語にパートナーシップ雇用という言葉があり、これは日本の企業における終身雇用制度に伴った雇用形態を指しています。

 

このジョブ型雇用という言葉を作ったのが、今回読んだ「ジョブ型雇用社会とは何か」の著者である浜口さんなのですが、この本の序章で「ジョブ型雇用」という言葉が独り歩きしており、「ジョブ型雇用」というイメージに乗せやすい表現が本来の意図するモノと形を変えてしまっていることについてブチ切れているのが印象的でした。

 

また、浜口さんはこの本の中で日本と海外の雇用形態の丁寧な比較、賃金支払いシステム、解雇規定、また日本の雇用形態が作られてきた歴史について戦中時代から掘り下げてかなり丁寧に書いてくれています。余談も多いのですが、知らなかった背景を学ぶこともできました。

 

社会保険労務士の受験勉強をしているときに「単語は見たことあるけど、中身はテキストに書いてなかった」ことがたくさん出てきます。

 

印象的なものだと過去の労働一般常識の選択式試験で、戦後の日本の賃金形態の推移が問われたのですが、その際に電気会社の提唱した「電算型賃金制度」という単語が出てくるのですが、テキストには詳細がありません。

 

浜口さんの解説では、「電算型賃金制度」は個人の職能やスキルに関わらず、年齢や配偶者、子供の数に合わせて基本給が変動する生活レベルに合わせたものだったそうです。個人の生活レベルに合わせて決められた賃金では、労働意欲の向上につながらず仕事に関連がないからダメだとGHQが反対したのですが労働組合が、頑張って生活レベルに合わせた給与支払いを守り抜いたという過去があるそうです。

 

また、50人以上を雇用する企業に、雇い入れ時と、年に1度の定期的に行うものとされている健康診断についても言及があり、諸外国では業種を問わず発症する可能性を含んだ傷病の予防に対する健康診断は医療保険や健康保険に規定があるそうなのですが、日本では労働安全衛生法に規定があります。

 

これは、戦時中に工場で働く労働者に出兵命令があったときに、健康な体で戦地に行けるように、各事業場に健康診断を定期的に行うように定められたことの名残なのだそうです。

  

〇人事考課について

・ジョブ型雇用では、仕事に賃金が割り振られているので、個人の出来不出来は採用時に判断され、その後の評価は行わない。

・メンバーシップ雇用では、終身雇用を前提としており、平社員から管理職まで、能力に合わせた細かい評価がある。職業能力よりもコミュニケーション能力や人間関係を良好に築いて職務にあたることが求められる。

 

〇ジョブ型とメンバーシップ型で受けられる恩恵の違い

・ジョブ型雇用は、仕事にみあった職業能力を保持していないと仕事に就くことができない。逆を言い返せば、就職難で希望の仕事に就くことができなかった人も、職業訓練等で見合った能力を会得すれば社会復帰がたやすい。

 

・メンバーシップ雇用は、新卒学生を確保し、会社組織が長期的なプランで育成を行う。採用時に仕事がわからなくても、その後の成長性を見越しているため、若者が恩恵にあずかりやすい。

 

〇日本教育がジョブ型に向かない理由

・高校の偏差値で能力を数値化されてしまい、有名企業は優秀な大学を卒業した学生を好んで採用しており、学歴フィルターが存在する。

 

・大学で学んだことよりも、困難な大学入試に耐えうるタフネスを身につけた学生という保証が欲しい。

 

・入社後に何の仕事をするかは、定まっておらず「どこの部署でも何の仕事でもできる人材」を新卒学生に求めており、大学はips細胞養成所になっている。

 

・職業専門高校が落ちこぼれ扱いされている背景がある。

 

〇生活給は能力給に変化した

・戦後は扶養家族や年齢に応じた賃金が定められていた。

日本政府は1955年に仕事に合わせた賃金体系を定めた同一労働同一賃金を広めたかったが、労働者側の反対にあった。

・結果として「結婚すれば子供が生まれてお金がかかるから賃金をあげる」という生活給は仕事との関連性がなく、評価につながらないため、「勤続年数が伸びれば、会得する能力も向上する」という理論から年功序列という発想が生まれ、能力給という日本独自の賃金体系が定着した。

・そもそもが生活給から派生した能力給であるため、現在に至っても「やる気」「熱意」といった抽象的な判断基準で能力を判断せざるを得ない、お粗末な人事考課がたくさんある。

・「頑張って残業をしている=やる気がある」「長時間労働=会社に貢献している」という個人の会社に対する忠誠心が評価基準となっている部分もある。

 

〇メンバーシップ型はパワハラになりやすい

・メンバーシップ型では、何もわからない新人が入職するため、仕事のすべてを先輩上司が教えることとなる。

・「自分は会社に育ててもらった」と考えている中年上司が、自分が受けてきた指導教育と同じことを新卒に行い、パワハラ認定されてしまう。指導とハラスメントの境界線がわかりにくい。

 

〇障碍者雇用がなじまない理由

・あらかじめ定められた職務につく「ジョブ型雇用」が想定されて仕組みができているが、日本の企業の雇用形態がメンバーシップ型である。

・特定の業務は可能でも、異なる仕事には困難を抱える障害者がメンバーシップ雇用の枠で異動をしたり配置が変わると、業務に従事することができなくなる場合がある。

・知識やスキルよりも人間関係やコミュニケーション能力を従事するメンバーシップ型雇用では、相性が悪い。

 

さて、いかがでしたか?

 

他にも外国人労働者の問題や、諸外国におけるジョブ型雇用に関する問題提起も濱口さんが提唱しています。

特に、受験生の方は一読すべきかなと感じましたので、強くお勧めを致します。