第51回メタ認知の知層をお送りします。
今回は、障害年金について深堀りをしていきます。
本編に入る前に、年金制度とはどのようなものかご存知でしょうか?
年金制度は明治初期にできた軍人に対する恩給制度が形を変えたもので、昭和36年に国民皆保険として全国民が年金制度に加入するようになりました。
昭和61年の法改正で、国民年金制度を基礎的な1階部分、厚生年金制度を加算的な要素として2階部分で構成されています。
しかし、国民年金、厚生年金のどちらか1方を受給する選択をするケースもあります。
年金は現役世代が保険料を支払うことで、障害や老齢で収入が見込めない方、家族を失った方などを支える世代間扶養となっています。
すべてが保険料で賄われているわけではなく、国庫負担と合わせて、運営がされています。
今回は8つのテーマでお話をします。
①障害年金はどんなときに受けられるのか
②障害等級の一般的な区分
③初診日要件について
④障害認定日について
⑤保険料納付要件
⑥請求に必要な書類
1.障害年金はどんなときに受けられるの?
障害年金とは病気や怪我が一定の障害に該当すれば請求することができる給付です。
どんな障害が該当するかは年金の等級表で示されています。
身体障害の例だと、具体的には両眼の視力が0.1以下になったら3級該当、体幹の機能に歩行困難な程度の障害がある場合は2級、両上肢のすべての指の欠損が1級などです。
精神障害の場合は、労働が著しい制限を受ける程度によって該当等級が異なります。
障害年金を受給するには初診日要件、保険料納付要件の2つに該当する必要があります。初診日要件は医師、歯科医師の診察を初めて受けた日を証明できることです。
保険料納付要件は
①初診日が該当する月の2ヶ月前に被保険者期間がある場合は、被保険者期間の3分の2以上の納付済み期間があること
②初診日の2ヶ月前までの1年間に保険料納付済み、免除期間がない場合、つまり未納期間がないこと。
この2つのどちらかに該当することです。
まとめると、
・等級に該当する障害があること
・初診日を証明できること
・保険料納付要件を満たしていること
が障害年金の受給要件です。
2.障害等級の一般的な区分について
等級については詳細な傷病状態が定められていますが、目安となる基準があります。
3級の場合は、労働に著しい支障や制限があり、職場の理解や援助の配慮で就労が可能な場合
2級は、家庭内の軽食づくりや洗濯、温和な活動ができるが、それ以上の活動が困難な場合。労働による収入の確保が難しい状況
1級は、身の回りのことはかろうじて可能だが、活動範囲がベッド周辺に限られる場合
と規定されています。もちろんあくまでも目安であり、一般就労をしているから該当しないということもありません。
また、厚生年金には傷病が治ったけれど労働が制限を受ける場合には障害手当金がもらえる制度もあります。
一般的な判断基準では1級2級は日常生活の状態、3級は就労状況の制限について着目されます。
この要件は試験問題にも出題実績があるのですが、2級でも一般就労をしている方もたくさんいますし、かなり大きな個人差があるようですね
3.初診日要件とは?
障害の原因となった病気や怪我などで初めて診察を受けた日です。
国民年金や厚生年金の加入中に、初めて病院を受診した日を指す言葉です。
初診日を証明する書類は「受信状況等証明書」で年金機構のHPからダウンロードできます。
また、健康診断で以上が発見され療養指示があった場合も初診日要件を満たします。
正確な傷病名が定まらず、診断が付く前でも、初診日に該当します。
頭痛や腹痛で内科を受診し、その後精神的なストレスが疾患の原因だった場合、内科での受診が初診日に該当するようなケースです。
4.障害認定日とは?
初診日から症状が確定する1年半が経過した日を障害認定日といいます。障害認定日以降でなければ障害年金を受給することはできません。
初めて病院を受診してから1年半が経過していなくても、症状が固定し、それ以上治療が見込めない場合も障害認定日となります。
人工関節を挿入置換したり、心臓ペースメーカーの装着などが該当します。
障害認定日に障害等級に該当することで障害年金の受給が可能になります。
もし、障害認定日に症状が該当しなかった場合も定期通院を継続しており、初診日から何年も後に障害年金の受給決定がなされた場合は、障害認定日に遡って障害年金を5年間分は受給することが可能となります。
定期的な通院をしていなければ、過去の通院実績はリセットされ、傷病が治ったと判断されます。
国民年金しか加入していない場合でも、障害年金2級であれば、年67万円✕5年=350万近く貰えますし、厚生年金に加入していた方であれば5年間の遡及申請で得られる金額はとても高額ですよね。
5.保険料はどれだけ納付すればいいの?
20歳になると国民年金に加入することになります。
初診日の2ヶ月前で20歳を超えている場合は、全期間の2/3が保険料納付済み期間であること、もしくは1年間に未納期間がないことです。
保険料免除期間、学生納付特例期間、産前産後休業中、保険料納付猶予期間は、納付済期間と同等に障害年金を受給するための要件にカウントされます。つまり、未納期間とは判断されません。
保険料が高額で支払うことが困難な場合は、保険料免除、納付猶予の申請をしましょう。
初診日が20歳前にある場合は、被保険者期間に初診日があるかで要件が変わります。
先天的な知的障害など20歳に達するまでに診断名がついている場合は、保険料納付済み期間がなくても、20歳前傷病として、20歳を超えると国民年金から障害基礎年金を受給できます。
高卒のサラリーマンで傷病を患い、18歳から20歳までに初診日がある方は20以下でも障害基礎年金、障害厚生年金を合わせて受給できるケースがあります。
6.障害年金の請求方法と必要書類は?
・年金請求書
・初診日を証明するための受診状況等証明書
・医師の診断書
・病歴、就労状況等申立書
・基礎年金番号通知書
・加給年金対象者の戸籍謄本、住民票
・障害者手帳の写し
などですが、受給者の状況に応じて必要な書類が変わります。
一般的な請求までのスケジュールは
①初診日確認
②保険料納付要件を年金事務所で確認
③受診状況等証明書の取得
④診断書の取得
⑤病歴、就労状況申立書の作成
です。
年金事務所では手順を細かく説明をしてくれますし、不安な方はまず障害年金の受給を専門としている社会保険労務士事務所に依頼をしましょう。
なかでも重要な書類は診断書です。医師の診断書の内容によって障害等級が決定されます。
障害年金を請求する状況によって診断書の作成依頼時期も異なります。
さて、いかがでしたか?
専門的な用語が多くて聞き慣れない部分もたくさんあったかもしれませんね。
障害年金は、病気や怪我で収入が見込めない方の助け舟です。
障害厚生年金は6ヶ月後、障害基礎年金は3ヶ月を経過すると通知書が届きます。
支給決定された場合は年金証書が自宅に届き、結果通知から2ヶ月後の15日に指定金融機関に年金が振り込まれます。
不支給の場合は通知を受け取った日から2ヶ月以内であれば社会保険審査官に審査請求が可能であり、その後も不支給であれば社会保険審査会に再審査請求が可能です。
審査請求で受給決定になる場合もありますので、あきらめないことが肝心です。
障害年金は書類のみで審査をされるため、書類が実態と合致していないと、正確な等級での受給ができません。
頻繁に法改正や要件改定も行われているため、書類が揃わなかったり、自分ひとりでの準備に不安がある方は、社会保険労務士を頼りましょう。
今回は
三五館より障害年金というヒント 最強の社労士チームが徹底ガイド
清文社より田中章二さん著作 遺族年金、障害年金、離婚時年金Q&A
通信教育アガルートより 社労士テキスト 厚生年金 国民年金
を参考にしています。