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今回は労災法の改正や現状について4つの項目でお伝えをします。

1.精神疾患の原因とする出来事の追加

2.業務を要因とする精神疾患の認定基準の見直し

3.メンタルヘルス対策の現状

4..労災の発生の現状

では、一緒に知識の上書き保存をしていきましょう。

1つめのテーマ「精神疾患の認定基準である出来事の追加」についてお話します。

労働災害法では、業務中に心理的なストレスが原因で発生する精神疾患の原因を具体的に公表しています。業務中の病気によるケガや、重大な人身事故を引き起こしたり、多額の損失を出してしまったなどの仕事の失敗や過重な責任の発生など7項目に分かれています。

今回の改正では、

③仕事の質の項目に「感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事したこと」

⑥対人関係の項目に「顧客や取引先から著しい迷惑行為を受けたこと」

の2つが追加されました。

感染症への従事はコロナウィルスへの対応から、業務内容、困難性、能力とのギャップ、予測の度合いなどが具体的な判断要素として挙げられています。

顧客や取引先、施設利用者からの迷惑は、近年のカスタマーハラスメントの問題から、迷惑行為に至る経緯や状況、反復、継続性の有無、会社の対応の有無や改善状況で判断をされます。

2つめのテーマ「業務を要因とする精神疾患の認定基準の見直し」についてお話します。

労働災害の心理的負荷は弱、中、強の三段階で評価がされます。

改正の前は6か月前に心理的に大きなストレスを感じる特別な出来事がなければ、業務起因性(仕事への関連性)がないと判断をされていましたが、特別な出来事がなくても、業務による強い心理的負荷により悪化した場合は業務起因性を認めることとなりました。

また、以前は医師の意見を収集するために3名の専門医で合議体で話し合って決めていましたが、改正後は特に困難なケースを覗いて1名の専門医で判断できるようになり、制度の簡易化がなされました。

また、具体的な出来事をより詳細に拡充し、感染症の追加では「病気や事故の危険性が高く、防護対策も一定の負担があったが、感染対策が実施されていたため、職員のリスクが提言されていた」場合は弱、中、強の中と判断。

パワハラの項目では「無視、人間関係からの切り離し」、「私的なことに過度に立ち入るプライバシーの侵害」は強とされています。

また、今回の改正で、性的志向、性自認に対する精神的負荷も考慮されることになりました。

3つめのテーマ「メンタルヘルス対策の現状」

仕事や業務内容にストレスを感じているかのチェックが労働安全衛生法により、50人以上の従業員を雇用する事業場に義務化されています。

改正前はストレスの有無を先に確認し、ストレスを感じる事柄を選択する形式でチェックをしていました。

令和4年度からストレスを感じる事柄を選んでもらい、該当していればストレスを感じていると評価することになりました。

その結果、82.2%の人が仕事にストレスを感じているとされ、政府の目標はストレスを感じている人の割合を50%以下に設定されました。

ちなみに、ストレスの順位は1.仕事の量、2.仕事の失敗、3.仕事の質

となっています。

4つめのテーマ「労災の発生状況」

業務における精神疾患の労災認定が年々増加傾向にあります。

令和4年度は精神疾患による労災の請求は710件あり、そのうちの18件がコロナウィルスによるものでした。

過労死での労災認定は令和4年で803件となり、前年度より50件増えています。これはコロナ明けにより経済状況がコロナ前に戻りつつある結果ですね。

過労死での労災認定で多かった業種は1.運輸業28.9%、2.建設業15%、卸売り、小売り13%となっています。

過労死の多い職種は、1.輸送、機械運転、2.専門技術職とサービス業が同率同順位となっています。

全ての疾患の労災請求で多い業種は、1.医療福祉19%、2.製造14.6%、卸売り、小売り14.4%でした。

出来事別では、1.上司からのパワハラ147件、2.悲惨な事故の目撃89件、3.仕事内容、量の変化78件

年代別では1.40代29%、30代22%、50代21%となっています。

では、今回のまとめです。 

労働安全衛生法では、労働災害防止計画が公示されており、今はR5年~R10年を対象とした第14次計画となっています。

労災防止計画は国が労災防止のために重要な事項を取りまとめた目標です。

目標として2022年と比較して2027年の労災死亡率の5%減少、具体的な数値は定められていませんが、労災での死傷者が増加傾向にあるため、増加に歯止めをかけて死傷者の減少することとしています。

さて、今回の話を聞いて何が印象に残りましたか?

今回の参考書籍を紹介します。

1:通信教育アガルート 社会保険労務士テキスト 法改正、白書対策です