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第61回メタ認知の智層をお送りします。

今回は 派遣労働者と労働法の関連について5つの項目でお伝えをします。

働き方改革の一環で同一賃金同一労働という言葉をよく耳にしますよね。

労働者派遣を含め、短時間、期限の定められた事業場で働く有期雇用労働者には、不合理な待遇の禁止に関する指針が厚労省より公表されています。

派遣労働者など非正規労働に従事する方と正規労働者との間で、待遇の差が不合理と認められる相違を設けてはならないと定められています。

今回は社労士試験にも、よく頻出する労働者派遣法やそれに関連する労働法の話をしていきます。

1.労働者派遣の仕組みと制限について

2.派遣労働者と労働基準法の関連

3.派遣労働者と損害賠償

4.派遣労働者の安定雇用とキャリアップ

では、一緒に知識の上書き保存をしていきましょう。

1つめのテーマ「労働者派遣の仕組みと制限について」についてお話します。

派遣元と派遣先には労働者派遣契約が締結されています。派遣先は派遣元から委託された権限に基づいて指揮命令権を行使します。

雇用主以外から労働力の供給を得るシステムは、労働力需給調整システムと呼ばれており、労働者派遣事業の他、職業紹介事業、労働者募集、労働者供給事業、請負制度などがあります。

請負とは、請負業者が労働者の雇い主で指揮命令関係を保持します。

つまり、仕事を請け負った会社が、従業員に業務を指示し、注文者の仕事に従事することを派遣業といいます。

労働者派遣は、船員、港湾運送、建設、警備、医療関係、士業に派遣制限があります。

同じ場所に3年以上派遣してはならないというルールも存在します。

2つめのテーマ「派遣労働者と労働基準法の関連」についてお話します。

派遣労働者の労働条件は派遣元に適用されます。

1ヶ月80時間を超える長時間の時間外労働による脳、心疾患の発症予防のために実施される医師による面接指導の実施、ストレスチェックの実施は派遣元に義務があります。

派遣先での労働期間に関わらず、派遣元で使用された期間に基づいて年次有給休暇の日数が算定されます。

派遣労働者が、派遣元から派遣先に雇用関係が切り替わり、派遣先に雇用される場合には年次有給休暇の日数は繰り越されず、派遣先の新入社員として扱われます。

派遣先は、派遣された労働者と、派遣先に雇用されている従業員を合わせた数が5人以上の場合は派遣先管理台帳を作成する義務があり、100人以下を1単位として派遣先管理責任者の選任が義務付けられています。

3つめのテーマ「派遣労働者と損害賠償」

派遣中の労働者が頻繁に無断欠勤や遅刻を繰り返すなど、業務に支障が出ている場合の懲戒処分の決定は派遣元により決定されます。

派遣労働者は派遣先の監督下で業務に従事しており、派遣先に指揮命令関係があります。

そのため、犯罪などの違法行為や直接的な損害が発覚した場合は、派遣元が実際の勤務状況について動向を把握することが難しいです。

派遣先が労働者に直接損害賠償を請求し、派遣元に使用者責任が及ばないこととなっています。

しかし、平成8年に判例があるパソナ事件では、派遣元に賠償請求がされました。

派遣労働者が派遣先の金員を横領しました。派遣元であるパソナが派遣労働者の住民票の確認もせず、身分の明らかでない状態で派遣しており、職務執行の監督責任に注意を尽くしているとは言えないと使用者責任が求められました。

4つめのテーマ「派遣労働者の安定雇用とキャリアップ」

派遣事業の許可、更新にはキャリアアップ、教育訓練に関する判断が織り込まれています。

・教育研修に必要な施設や環境の整備

・教育訓練の責任者が配置など、能力開発体制の整備

・研修費用を徴収しないこと

派遣先に1年以上雇用される者や、雇用の安定を図る必要性が高いと認められる者を特定有期雇用労働者と定義しています。

教育訓練は、教育訓練計画に基づいて実施され、派遣労働者の都合に合うような配慮も求められています。

事業主は非正規雇用のキャリアアップを促進したとして雇用保険からキャリアアップ助成金を受けることができます。

キャリアアップ助成金を受けるには、

・正社員化 ・賃金規定改定 ・健康診断制度 ・賃金規定共通化

・諸手当制度共通化 ・短時間労働者の労働時間延長

などの労働環境の改善が求められます。

派遣労働者を使用、雇用するにあたり、多くの法律制度が適用されています。

安全衛生法で規定されている健康診断では、年に1度の一般健康診断は派遣元に実施義務がありますが、夜勤や身体的に負荷が大きい事業場で働く際に受ける6か月ごとの特殊健康診断は派遣先に実施規定があります。

精神的なストレスでの休業の申し出は派遣元にしなければなりませんが、パワハラなどのストレス要因は派遣先にあるため、精神的なストレスの原因解消の義務は派遣先あります。

雇用されているのは派遣元ですが、実際に業務に従事しているのは派遣先であるため、状況や業務内容、指揮命令関係などで、判断されることも多いです。

今回の参考書籍を紹介します。

1:通信教育アガルート 社会保険労務士テキスト 関連科目

2:成美堂出版 労働者派遣法がわかる本