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公的年金の仕組みとは?

今回は、高齢になったり障害をもってしまったり、家族が死亡した場合のように、将来的なリスクに対して社会全体で備える仕組みとなっている、日本の年金制度についてお話していきます。

現在の日本の年金制度は日本国民全員が加入しなければならない「国民皆保険」となっていますが、そのように全国民を対象とした制度になったのは1961年の制度改革からです。

日本の年金制度の始まりは軍人に対する恩給制度がきっかけでした。

日本政府が発足した当初の年金制度は加入できるのは軍人に限られていて、多くの人々自由に加入できず、「年金」というよりも、「恩給」としての性格が強いものでした。

ちなみに1875年というと幕末志士である榎本武明がロシアと樺太、千島列島交換条約を締結した年でもあり、軍事国家として日本が世界に台頭していこうとする真っ只中での制度発足だったようです。

その後、1923年に公務員に給付を拡充した恩給法、1939年に船員を対象とした船員保険法、1942年に労働者を対象とした労働者年金保険法と制度が新設されていき、現在の年金制度に至りました。

ちなみに、今の年金制度は、誰しもが加入義務のある国民年金を1階部分とし、会社員や公務員が加入する厚生年金を2階建てとした構造になっており、その上の3階部分に、それぞれが任意で加入する年金基金やidecoといった個人年金が上乗せされる仕組みになっています。

国民年金には第一号から第三号までの被保険者区分があります。

第一号被保険者は自営業者、農業従事者、学生など企業に雇用されていない方が対象です。

第二号被保険者は、サラリーマン、公務員を指します。

第三号被保険者は第二号被保険者の扶養配偶者、サラリーマンの奥さんなどを指します。

国民年金は、65歳以降に給付される老齢基礎年金、障害が認められた際に給付される障害基礎年金、年金加入者が死亡した場合に、20歳未満の残された子供のいる配偶者が受け取る遺族基礎年金の3つの給付が主となっています。

そのほかには、月額400円を国民年金保険料として納めた場合に、65歳以降に受け取る老齢給付に加えて、200円に納付月数を乗じた金額を受け取れる付加年金

子供がいない家庭で国民年金の加入者の夫が亡くなった場合に、60歳から65歳になるまでの妻に支給される寡婦年金

加入者が36か月以上、国民年金保険料を支払って死亡し、遺族基礎年金の対象が居ない場合に遺族に支払われる死亡一時金

日本で働いている外国人が半年以上国民年金保険料を支払い、外国に帰った場合に受け取ることのできる脱退一時金

があります。

さて、このように多くの保証がある国民年金ですが、よく「年金は支払っても貰えない」という声を聴きますよね。

これは、主として国民全員が受給する可能性が高い老齢年金についてのイメージだと思います。

国民年金の支払額は5年ごとに保険料と国庫負担の額が見直され、収支や現況について予測の報告がされています。

では、3つめのクエスチョンです。国民年金の収支計画が立てられる期間のことを財政均衡期間と呼ぶのですが、収支の見通しは100年間を見越して立案されています。

また、老齢基礎年金はかつて最低でも25年以上の保険料支払いがなされていないと受給できない制度だったのですが、

平成29年度に制度が改定され、最低10年以上の支払いがあれば受給できるようになりました。

ちなみに、国民年金を満額受け取るための受給期間は40年なのですが、現在の制度で国民年金に40年加入して、受給できる満額は1年間で780900円です。これを12か月で割ると1か月65075円です。

ちなみに、目安ですが、35年の掛け金では、68万円、30年では58万円、25年では48万円と掛け年数が5年減少するごとに年間の受給金額は10万円減少します。

最低支払年数の10年では1年で受け取れる老齢年金の金額は19万5225円。1か月にすると16268円です。

さて、年金は貰えない論争の他で「払っただけ損をする」という意見もよく聞きますよね。

ちなみに令和4年度の国民年金保険料16590円ですね。

これは所得に応じて変動するようなものではなく、国民全員一律で同じ金額です。

毎月16590円を40年支払った場合、16590×1年間の12か月で19万9080円それを40年支払うと796万3200円になります。

796万3200円を満額受給金額の79万800円で割るとおよそ10年となります。

つまり、現行法で65歳から貰える老齢年金は75歳を超えた時点で元は取れる計算となります。

意外と、もらえますよね。

サラリーマンや公務員の場合は国民年金に加えて、厚生年金の給付が受けられます。

厚生年金の保険料は所得によって異なりますが、掛け率は同じで、月収の18.3%を雇用主と折半して支払います。

計算式については割愛しますが、これも概ね10年以下で元が取れる計算となっています。

さて、いかがでしたか?

高齢化社会と言われ、日本の社会保障を批判する声もよく聞こえます。

しかし、一度調べてみると、保証は手厚くなっています。今後将来的な受給額については未定な部分は多いですが、払うことがムダ金だと判断するような仕組みではないのかなと思います。

今回の放送は通信教育のフォーサイトより社会保険労務士養成テキスト、また年金アドバイザー3級公式テキストを参考にしております。