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 8月11日は「山の日」です。
 アウトドアブームの影響もあり、最近では登山を楽しむ人が増えていますが、課題となっているのが、登山者のマナー。
 美しい大自然が広がる道内の山々でも自然との距離感が問題となりつつあります。
 北海道のほぼ中心、大雪山国立公園。
 1年のほとんどが雪に覆われているこの山に短い夏が訪れています。


 上川町の層雲峡から黒岳を越え、見渡す限りの稜線と、雪渓に囲まれた登山道を進むと突如現れるのが、黒岳石室。
 ここも多くの登山者で賑わっています。
 登山者:「ロープウェイとリフトを利用したら、比較的初心者の方でも、達成可能な山ですし、たくさんの山を経験できるので、お気に入りの山の1つです」
 登山者:「7月にこれだけ雪が残って、緑がある、花が咲いてるっていうのは本州にはない風景なので、それは素敵だなと思います」

 登山道と共に整備されてから2023年で100年を迎える黒岳石室。
 夏の間、管理人が常駐する大雪山では珍しい避難小屋です。
 管理人の1人、細田直之さん。
 17年間、石室を管理しながら大雪山を訪れる登山者を見守ってきました。
 黒岳石室管理人 細田 直之さん:「現在の天気は晴れ、雲はほとんどありません」
 水道はなく、電気も太陽光のバッテリーのみ。
 最低限の設備ですが、登山者を守る重要な拠点です。
 黒岳石室管理人 細田 直之さん:「大雪山国立公園の中に山小屋が避難小屋がいくつもあると思うんですが、ほとんど無人です。管理人がいるっていうだけで安心感は登山者に生まれると思うんですよ」
 人々を魅了する雄大な大自然。
 しかし、この大自然は、危険と背中合わせ。
 (テントのそばを歩くクマの親子)
 それを忘れている人が増えています。

 雄大な自然が人々を魅了する大雪山。
 2023年、登山者とヒグマの接近が問題となりました。
 これは7月8日、白雲岳避難小屋のテント場で撮影されました。
 人を恐れないクマの親子。
 登山者のすぐそばを平然と歩いています。
 そして登山者も…撮影を続けています。


 さらには子グマがビニールをくわえ、遊ぶ姿も…。
 白雲岳避難小屋を管理する団体の代表・岡崎哲三さんは、この状況に危機感を訴えます。
 北海道山岳整備 岡崎 哲三 さん:「これを続けると、ヒグマも人なれをしちゃって。さらに人に接近して、人は怖くないんだ。人間とクマの距離が30mを切ってると聞いた。30mは本当にクマが本気を出したら、一瞬で迫ってくる距離。

 子グマがいる中で、こっちのことをちゃんと認識していて、子グマなんかしっかりこっちを見ながら、いるっていう状態。本来はちょっとありえない状況だなと」
 白雲岳避難小屋は現在もクマが居座っていて、テント場の閉鎖が続いています。

 大雪高原温泉。
 特に、ヒグマが多く生息するエリアで、人とクマの距離を保つため、日々、巡視員が登山者へのレクチャーやクマの行動を観察しています。
 北海道山岳整備 岡崎 哲三 さん:「前日の食痕ですね。こういうのが結構特徴的だったりするんですよね。クマは歯が全部とがっているので、スパッとかみ切ることが出来ない。シカだとちょん切ったようになっているんですけど、こういう風に繊維が残ったり噛み跡がばらばらしている時は、クマの場合が多いです」

 高原温泉では、日々、巡視員がクマの痕跡や行動を観察し、コースの規制などで、登山者との接近を防いでいます。
 北海道山岳整備 岡崎 哲三 さん:「これはきのうのフンですね。あんまり胃袋でしっかり消化できないんですね。クマの場合は食べたものがほとんどそのまま出てくるので、何を食べたかよくわかる」

 巡視中にも遠くの斜面にヒグマの姿が。
 吉井 庸二 気象予報士:「ヒグマが斜面をゆっくりと歩いています」

 ここでも2023年、ヒグマと人の距離を壊しかねない事態が起きていました。
 北海道山岳整備 岡崎 哲三 さん:「ここにおにぎりが置いてあったんだと思います。あ、ここに米粒がまだ残ってますけど、ここら辺に1個あって、そのあたりに欠片が散らばっていたという感じですね」
 クマが人間の食べ物の味を覚えてしまうと、人に付きまとってしまう危険な状況になっていた可能性があります。
 大雪山で人とクマが共存するためには、一定の規制が必要だと岡崎さんは感じています。

 北海道山岳整備 岡崎 哲三 さん:「人間がある程度いるとわかっても、(餌を)食べれる距離っていうのが100mから200mという距離なのかなと思うので、その距離さえ守ってれば、クマも気にせずにいてくれるかなと思います。
 クマが本気出したら来ます。間違いなくね。100mあったって、あの時速60kmぐらい出せるので、本当に十数秒でこっちまで来ちゃうと思うんですよ。
 だから、まずはそういう人に近づいてくるクマが居ないって言うのを巡視員が判断して、通っても大丈夫かなっていう判断とそういうクマが多いときに、遠くに見えていたら、クマの生活をできるだけ邪魔しないようにして、ちらっと見て帰ろうっていうスタイルですね」
 ヒグマがいる生態系っていうのはものすごく素晴らしく、価値ある場所だと思うんですね」


 野生動物と人間、双方にとって大切なのが「適切な距離」です。
 北海道山岳整備 岡崎 哲三 さん:「山に餌が無くなって下に降りてきた時に、道路の脇とかあるいは民家に行くようなクマになってしまったら、それこそ撃ち殺されちゃいますよね。だから、クマにとっても人間になれるってことは本当に良くない」
 北海道の山は動物たちの生活圏です。
 人間側のマナーが問われています。