応接間でピアノを弾く早苗の背後に黒トカゲの魔の手が迫っていた、ちょうどその頃。
警護のため廊下に立っていた二人の書生は、応接間から物音がしなくなったことを不審に思い始めていた。
そこに早苗の様子を伺いに彼女のばあやがやってくる。
書生たちを𠮟りつけ、ばあやが応接間の扉を開けると、
そこいたのは早苗ではなく、異臭を放って長椅子に倒れ込む浮浪者だった。
原稿:江戸川乱歩『黒蜥蜴』青空文庫
BGM:『Evidence』稿屋 隆DOVA-SYNDROME