黒トカゲからの身代金要求を受けることにした岩瀬氏は、手紙に書かれていた指示通りに通天閣の展望台にやってきた。
冬の夕方。寒風吹きすさぶ展望台には、売店の店員夫婦を除いて誰一人いない。
欄干から地上の人々を眺めて待っていると、和服を着た一人の女性が現れた。
原稿:江戸川乱歩『黒蜥蜴』青空文庫