Rahnama N, Ben Jemâa N, Colson A, et al. Pregnancy in women with congenital heart disease: New insights into neonatal risk prediction. Am Heart J. 2024;273:148–158.
🧠 背景
先天性心疾患をもつ女性の妊娠は、母体だけでなく新生児にも高いリスクを伴うことが知られている。とくに低出生体重や早産、NICU入院の可能性が高いが、リスク予測の精度はまだ十分ではない。本研究は、大規模前向きコホートを用いて、新生児に関連するリスク因子を明らかにし、予測モデルを構築することを目的とした。
🔬 方法
ベルギーの大学病院で、2001〜2021年に先天性心疾患をもつ女性が出産した連続症例を対象に前向き観察研究を実施。合計647件の妊娠が解析対象となった。母体の心疾患の種類や機能分類、心エコー指標などを収集し、主要評価項目は「不良新生児転帰(NICU入院、早産、低出生体重などの複合アウトカム)」とした。多変量ロジスティック回帰により予測因子を探索した。
📊 結果
不良新生児転帰は全体の約39%に発生した。母体のNYHAクラスII以上、左心機能低下(駆出率45%未満)、チアノーゼ、抗凝固薬使用、双胎妊娠などがリスク増加と関連した。多変量解析では、母体の低酸素血症(OR 6.2)、左室機能低下(OR 3.1)、抗凝固薬使用(OR 2.9)が有意な独立因子であった。
さらに、先天性心疾患の重症度によってリスクに大きな差がみられた。ESC分類で重症にあたる群(フォンタン循環、単心室など)は全体の約7.5%にすぎなかったが、妊娠中の心合併症は40%、新生児の不良転帰は70%に達し、軽症群(25%)や中等症群に比べてきわめて高率であった。これらを組み合わせた新しいリスクスコアは、既存の単純モデルよりも予測精度が高かった。
💡 考察
本研究は、先天性心疾患女性の妊娠における新生児リスクを具体的な臨床指標で予測できることを示した。特に母体の酸素化と心機能の状態が強く影響する点は、周産期管理において重要な知見である。妊娠前からの適切な評価とリスク層別化により、NICU資源の適切な配分や出産計画の立案に活かせる。
✅ まとめ
先天性心疾患女性の妊娠において、不良新生児転帰は約4割に生じる。母体の低酸素血症、左心機能低下、抗凝固薬使用などが主要な独立予測因子であり、新しいリスクスコアの構築によって臨床的予測が改善した。今後は多施設での検証と、実臨床での導入が期待される。