Duch P, Wikkelsø A, Jørgensen CC, Jakobsen JC, Mathiesen O, Nørskov AK, Nedergaard H; on behalf of the National Pain after Cesarean Section (PACS) Working Group, in collaboration with CEPRA. Pain and adverse effects after caesarean delivery: A nationwide prospective cohort study. Eur J Anaesthesiol. doi:10.1097/EJA.0000000000002277.
🧠 背景
帝王切開は世界的に増加しており、分娩後の痛みは母体の回復や授乳、精神的健康に大きく影響する。これまでの研究は単施設や後方視的なものが多く、全国レベルでの実態は明らかでなかった。本研究は、帝王切開後の疼痛強度と副作用の頻度を明らかにするため、デンマーク全土の病院を対象に行われた。
🔬 方法
デンマークの「Pain after Cesarean Section(PACS)」プロジェクトの一環として、全国の産科病院を対象に前向きコホート研究を実施。帝王切開を受けた女性約6,000人を登録し、術後24時間以内の疼痛スコア(0〜10のNRS)および悪心、嘔吐、掻痒感、眠気などの有害事象を記録。麻酔方法(主に脊髄幹麻酔)、オピオイド使用量、鎮痛薬の組み合わせ、患者背景などを多変量解析で検討した。
📊 結果
術後24時間の平均疼痛スコアは4.1(NRS)で、約20%の女性が強い痛み(NRS≥7)を訴えた。術後悪心は約35%、嘔吐は17%に発生。掻痒感は40%以上、眠気は**25%**にみられた。疼痛の強さは、若年者、緊急帝王切開、オピオイド使用量が多い群で高く、反対にNSAIDsやアセトアミノフェンを併用した群では低かった。また、麻酔の施行法や施設間でも有意なばらつきが確認された。
💡 考察
帝王切開後の痛みは依然として軽視できず、患者の5人に1人が「強い痛み」を経験していた。多剤併用鎮痛(マルチモーダル鎮痛)を徹底することで疼痛とオピオイド関連副作用の双方を軽減できる可能性がある。施設ごとの管理方針や看護体制の違いも影響しており、全国的な鎮痛プロトコルの標準化が求められる。
✅ まとめ
デンマークの全国調査によって、帝王切開後の疼痛と副作用の実態が明らかとなった。術後1日目に中等度以上の痛みを訴える母親は約20%に上り、悪心・掻痒などの有害事象も高頻度である。適切なマルチモーダル鎮痛と副作用対策を組み合わせることが、母体の回復と満足度を高める鍵である。