Kondo H, Hyuga S, Tomoda Y, Fujita T, Adachi M, Okutomi T. Low-dose epidural morphine for postpartum pain relief: a randomized, single-blind study. JA Clinical Reports. 2025;11:51. doi:10.1186/s40981-025-00818-4
🧠 背景
産後疼痛は経腟分娩後も高頻度で生じ、母児ケアや授乳を妨げ得る。既報では1–4 mgの硬膜外モルヒネで経口鎮痛薬の使用が減る可能性が示されているが、本研究は**より低用量(0.75 mg)**で有効性と安全性の両立を検証したものである。
🔬 方法
単施設・無作為化・単盲検試験。CSEA(脊髄幹麻酔の一種)下で分娩した80例を、硬膜外モルヒネ0.75 mg vs 生理食塩水に割り付け、24時間のVAS-AUC(会陰痛・後陣痛を別々に評価:数が少ないと痛みが少ない)を主要評価項目とした。副次は追加鎮痛薬の初回要求までの時間、鎮痛薬投与回数、副作用発生率と重症度である。各群40例が解析に含まれた。
📊 結果(主要・副次の要点を数値で)
主要評価(VAS-AUC)
・会陰痛:中央値[IQR] 290 (90–580) vs 450 (265.6–760)、P=0.07。
・後陣痛:中央値[IQR] 18.8 (0–105) vs 156.3 (11.5–300)、P=0.004。
感度分析(24 h内に鎮痛薬≥2回使用例を除外、n=56)
・会陰痛 435 (202.5–766.3) vs 525 (313.8–850)、P=0.214
・後陣痛 0 (0–70) vs 180 (36.8–300)、P=0.0014。
副次評価
・追加鎮痛の初回要求までの時間:530分(95%CI 365–915)vs. 268分(95%CI 230–385)、log-rank P=0.001
・24時間の鎮痛薬投与回数:2 (0.5–3) vs 2.5 (2–3)、P=0.007。
副作用(発生率・OR)
・悪心:23% (9/40) vs 28% (11/40);OR 0.77(95%CI 0.24–2.38), P=0.79。1–2時間では生食群が重症度高め(P=0.04, 0.003)。
・掻痒:58% (23/40) vs 40% (16/40);OR 2.01(95%CI 0.76–5.4), P=0.18。12/18/24時間で生食群の重症度が低い(P=0.04, 0.003, 0.01)。
・尿閉:48% (19/40) vs 28% (11/40);OR 2.36(95%CI 0.86–6.7), P=0.11。24時間時点で導尿を要した症例なし。
・呼吸抑制:0/40 vs 0/40。
💡 考察
0.75 mgの硬膜外モルヒネは、後陣痛のAUC減少と追加鎮痛の遅延、投与回数の減少をもたらした一方、会陰痛AUCの有意な低下は示せず、主要評価の達成(両痛タイプの同時有意差)は満たさなかった。副作用は群間で有意差なしで、呼吸抑制はゼロ。掻痒の重症度は時間経過でモルヒネ群がやや高い時点があるが、臨床的には許容範囲と解釈できる。会陰切開の高率が会陰痛のAUC差をマスクした可能性も指摘される。
✅ まとめ
0.75 mg硬膜外モルヒネは、経腟分娩後24時間において後陣痛を有意に軽減し(AUC中央値18.8 vs 156.3)、追加鎮痛の初回要求を約4時間強遅らせ(530分 vs 268分)、鎮痛薬投与回数を減少させた(2 vs 2.5)。一方、会陰痛AUCの有意差は得られず、悪心・掻痒・尿閉の発生率に有意差はない(悪心OR 0.77、掻痒OR 2.01、尿閉OR 2.36、いずれも非有意)。呼吸抑制は認めず、安全性は概ね良好であった。