Kim HB, Oh AR, Park J, et al. Association of sugammadex, neostigmine, or pyridostigmine for reversal of neuromuscular block with postoperative bradycardia: a multicentre, retrospective observational study. Br J Anaesth. In press.
🧠 背景
全身麻酔に伴う筋弛緩薬は、適切な拮抗が行われないと呼吸抑制や合併症を招く。従来用いられてきたネオスチグミンやピリドスチグミンは有効である一方、コリン作動性副作用として徐脈を引き起こしうる。スガマデクスは異なる作用機序を持ち、副作用プロファイルも異なる。本研究は、多施設・大規模データを用いて、3種類の拮抗薬と術後徐脈の発生率を比較検証した。
🔬 方法
韓国の6大学病院における2019〜2022年の手術症例13万件以上を対象にした後ろ向き観察研究。筋弛緩拮抗薬としてスガマデクス、ネオスチグミン、ピリドスチグミンを使用した症例を抽出し、投与後1時間以内の新規徐脈(心拍数<60)を主要アウトカムとした。交絡因子を調整するため多変量ロジスティック回帰分析を行った。
📊 結果
総症例数:約132,000例
徐脈発生率
・スガマデクス:2.3%(約1,500例)
・ネオスチグミン:4.6%(約1,950例)
・ピリドスチグミン:5.1%(約1,250例)
オッズ比(スガマデクスを基準)
・ネオスチグミン:OR 2.04, 95%CI 1.88–2.21
・ピリドスチグミン:OR 2.26, 95%CI 2.06–2.48
重度徐脈(心拍数40未満)発生率
・スガマデクス:0.3%
・ネオスチグミン:0.9%
・ピリドスチグミン:1.0%
アトロピン投与率
・スガマデクス:0.4%
・ネオスチグミン:1.2%
・ピリドスチグミン:1.3%
💡 考察
スガマデクス使用例では、術後徐脈の発生率がネオスチグミンやピリドスチグミンのおよそ半分以下に抑えられており、重度徐脈やアトロピン投与も有意に少なかった。これは、スガマデクスがアセチルコリン濃度を上げることなく作用するため、ムスカリン受容体を介した副作用を起こしにくいことに由来すると考えられる。特に心疾患を有する患者や徐脈リスクの高い患者では、安全性において明確な利点を持つ。
✅ まとめ
13万例以上を対象とした多施設研究により、スガマデクスはネオスチグミンやピリドスチグミンに比べ、術後徐脈のリスクを約2倍以上低減させることが示された。重度徐脈やアトロピン使用も有意に少なく、拮抗薬選択における重要な根拠となる。