Reysner M, Reysner T, Kowalski G, et al. Chemical ablation of pericapsular nerve group with 95% ethanol for pain relief and quality of life in patients with hip osteoarthritis: a prospective, double-blinded, randomised, controlled trial. British Journal of Anaesthesia. 2025;135(2):382-389. doi:10.1016/j.bja.2025.04.045.
🧠 背景
股関節骨関節炎は高齢者に多く、強い痛みと日常生活の制限をもたらす疾患である。手術適応外や保存療法で十分な効果が得られない患者では、新たな疼痛緩和手段が求められている。近年、超音波ガイド下の神経ブロックが注目されるが、効果の持続性に課題がある。
🔬 方法
本研究は前向き二重盲検ランダム化対照試験である。股関節骨関節炎患者を対象に、周関節神経群(PENG)に対し95%エタノールによる化学的アブレーションを施行した群と、生理食塩水を用いた偽注射群を比較した。主要評価項目は疼痛VASスコアの変化、副次評価項目として股関節機能とQOLを評価した。
📊 結果
エタノール群では、治療後4週でVASスコアが平均6.7から2.4へ大幅に低下し、偽注射群では6.5から5.8と軽度の改善にとどまった。疼痛改善効果は12週時点でも持続していた。また、エタノール群では股関節機能スコアと生活の質が有意に改善した。重大な合併症は認められなかった。
💡 考察
95%エタノールによるPENG化学的アブレーションは、短期的かつ持続的な疼痛緩和をもたらし、QOL向上に寄与する可能性が示された。非手術的かつ低侵襲な治療として有用であり、特に手術不能例や保存療法不応例に適していると考えられる。
✅ まとめ
股関節骨関節炎患者に対し、95%エタノールを用いたPENG化学的アブレーションは、偽注射と比べて明確な疼痛軽減とQOL改善を示した。低侵襲で効果が持続することから、新たな治療選択肢となり得る。今後は長期的な安全性と最適な施行条件を検討する必要がある。