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Description

Queiroz I, Barbosa LM, Gallo Ruelas M, et al. Effect of peri-operative pharmacological interventions on postoperative delirium in patients having cardiac surgery: a systematic review and Bayesian network meta-analysis. Anaesthesia. 2025; doi:10.1111/anae.16757.

🧠 背景

心臓手術後せん妄は20〜50%の患者に発生し、死亡率や入院期間、長期的な認知機能低下と関連する重大な合併症である。多様な薬剤による予防が試みられてきたが、結果は一貫せず、最も有効な薬剤は明確でなかった。

🔬 方法

2024年までに発表された臨床試験を系統的に検索し、成人心臓手術患者を対象とする69件の無作為化比較試験(約1万1千例)を統合。主要評価項目は術後せん妄発生率。デクスメデトミジン、メラトニン、ハロペリドール、ケタミン、デキサメタゾン、スタチンなどを含む複数の薬剤をベイズ・ネットワークメタ解析で比較した。

📊 結果

プラセボと比較して、

・デクスメデトミジン:オッズ比 0.37(95%CrI: 0.26–0.52)

・メラトニン:オッズ比 0.42(95%CrI: 0.25–0.69)

と、いずれも有意にせん妄発生率を低下させた。

デキサメタゾンは一定の効果を示したが、ハロペリドール、ケタミン、スタチンなどは有意差を示さなかった。副作用としては、デクスメデトミジンで徐脈がやや多いものの、全体的に安全性は高かった。

💡 考察

デクスメデトミジンとメラトニンは、それぞれ「自然な鎮静」と「概日リズムの調整」を通じて、神経系の安定化と交感神経抑制をもたらし、せん妄発生を抑えると考えられる。抗精神病薬は発症後の管理には有用だが、予防効果は限定的である。せん妄対策には薬理的介入とともに、睡眠環境や疼痛管理など非薬理的介入を併用する多面的アプローチが望ましい。

✅ まとめ

心臓手術後せん妄の予防には、デクスメデトミジンとメラトニンが最も有効で、安全性も高いことが示された。その他の薬剤の効果は限定的であり、今後は薬理学的介入と環境調整を組み合わせた包括的戦略の検証が求められる。