🧠 背景近年、人工膝関節全置換術(TKA)後の入院期間の短縮と費用削減が求められており、特にバンドル支払い制度の導入が医療機関に質の向上とコスト効率の両立を促している。従来の長期入院から、早期回復を促進するERAS(術後回復強化プログラム)への転換が注目されている。
🛠️ 方法カナダ・トロントのマウントサイナイ病院で実施された単施設前後比較研究であり、2017年を介入前、2018年~2019年を介入後として比較した。多職種チームによるルートコーズ分析を行い、次の4つの介入を含むERASバンドルを導入した:(1)末梢神経ブロック(ACB)、(2)デキサメタゾンによるPONV予防、(3)ルーチンの導尿カテーテル回避、(4)術前教育の強化。
📊 結果平均在院日数は2.82日から2.13日に短縮(p<.001)、2日未満の退院率は18.3%から69.3%へ上昇した。リハビリ転院率は20.2%から10.7%に低下(p=.002)。24時間以内のモルヒネ換算使用量は60mgから38mgへ減少(p<.001)。PONVと中~重度疼痛の発生率も有意に減少し、30日以内の救急受診率も12.9%から7.3%に改善した。
💡 考察本研究の強みは、汎用的なERASプロトコルの導入にとどまらず、施設固有の問題点を根本原因分析で明確化し、それに即した介入を実施した点にある。特に医療資源の限られた中でも、実現可能性の高い介入を厳選し、多職種連携によって実行された点が成功の要因と考えられる。
✅ まとめERASバンドルの導入は、TKA後の在院日数とリハビリ転院率の大幅な削減に寄与し、コスト削減と患者アウトカムの改善を同時に達成した。施設特有の課題に合わせた柔軟なERAS導入が、今後の標準的アプローチとして広がる可能性がある。